西田哲朗広報が語るチームの裏側…ピリつく「1日の始まり」
チームは前半戦を終えて51勝34敗4分け。首位・日本ハムと2ゲーム差で、後半戦に突入します。今季から「チーフ」の肩書きを背負うようになった西田哲朗広報に、ここまでの戦いを振り返ってもらいました。5月からベンチ入りできるようになった長谷川勇也R&Dグループスキルコーチ(打撃)の「的確」な声かけ、リバン・モイネロ投手の躍進を支える“相棒”の存在、中村晃外野手に見た“激変”……。さまざまな視点から、チームの内部に迫りました。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
開幕してすぐは苦しみましたけど、やっぱりすごいなと思いましたね。これだけ怪我人が出て、よく盛り返したなと思います。監督はもちろん、首脳陣は焦っていなかったと思うんですよね。
僕も今年からチーフという肩書きがつくようになって、チームのミーティングにも入らせてもらうようになりました。監督やコーチが集まる場所で、中からホークスを見るのはもちろんですけど、プラス俯瞰的な視点も持てるようになったと思います。詳しくは言えないんですけど……。
長谷川勇也コーチから選手へ…声かけが「的確」
ミーティングのタイミングとしては練習前。広報からも1人、入らないといけないんです。怪我人やファームのことまで共有されます。それを取り扱うようなことはなくて、監督やコーチ以外の人にとっては、情報を把握しておくことが目的だと思います。当然、雰囲気はピリついたもの。1日が始まる大事な瞬間なので。1つ1つのレベルがとにかく高くて、すごく勉強になりますよね。
今年から始まった変更点といえば、伴元裕メンタルパフォーマンスコーチと、R&Dグループスキルコーチ(打撃)がベンチ入りできるようになりました。ホークスのすごいところはトライすること。去年リーグ優勝を果たしましたが、あれだけの勝ち星(シーズン91勝)を記録したのに、新しい肩書きのコーチを導入していこうという動き、決断できる組織というのは率直にすごいなと。エラーが起これば元に戻せばいい。挑戦していく大切さはめちゃくちゃ感じます。
僕は長谷川勇也コーチとは現役時代も一緒にプレーをしました。今は指導者になりましたが、本当に周りが見えている人です。僕は試合中、ベンチに入る権利もあるんですけど、裏にいると長谷川コーチの声が聞こえてきます。そのタイミングが的確なんですよね。
試合中の声というのは、他の選手にも聞こえるわけです。10人いれば10人が「あ、そうだな」って思うような声を、瞬間的に出すのはめちゃくちゃ難しいことだと思います。マイナスになりそうな時、いかにプラスに持っていけるか。ベンチに帰ってきた時に、その選手がどんな言葉をかけてほしいのかなって、相手が求めていることをちゃんと察して話ができる。もはや恋愛と一緒ですよ(笑)。1軍で長谷川コーチが見られるのは久しぶりですが、改めて偉大さを感じているところです。
モイネロと通訳との信頼関係が「伝わってきます」
選手で言えば、リバン・モイネロ投手の活躍が目立っています。もちろんピッチングもすごいし、彼自身の賢さもあるんですけど、僕は岡本(健慈)通訳のサポートがあるからだと思います。いいことはいい、悪いことは悪いと言える方なので。
通訳の仕事は、ただ翻訳するだけではありません。選手のために、どういう伝え方が正解なのか。日本とは文化が違いますから、そこに合わせて納得させてあげられるような訳し方だったり、今はこれを伝えない方がいいだとか、そういうところまで考えないといけないです。「お前は通訳のくせに」と思われる可能性もあると思うし、選手が間違った方向に行きそうな時、正すのはめちゃくちゃ難しいこと。だから優しいだけじゃできない仕事なんです。
そういった意味でモイネロと岡本通訳の関係性を見ていると、信頼がとても伝わってきます。モイネロにベストパフォーマンスをしてもらうためにはどんな行動を取ればいいのか、全部考えて動いていると思うんですよね。キューバから日本に来ている中で、ストレスなく過ごしてもらえるように。些細なこと1つにしても、マウンドでの結果に繋がってくるんだなと。僕にとっても新たな発見でした。
代打1本からスタメンへ…明らかに変化した空気
もう1人、中村晃選手の存在です。今年は代打1本というところから、怪我人が出たことで今も試合に出ていますよね。数字には見えないような活躍がありますし、ここぞという時に晃さんがいることでチームも支えられていると思います。
印象的な瞬間があったんです。代打から始まったシーズンの中、スタメンで出るようになって晃さんの表情が明らかに変わった時があったんです。裏方の人とも「顔つき変わりましたよね」っていう話をしたのも覚えています。1軍の中では(柳田悠岐外野手が離脱していることで)最年長ですし、やっぱり自分がやらなあかんと思っているんじゃないですか。6月から少し数字も落ちてきてはいるんですけど、それだけ精神を削ってやっているんだと伝わってきます。
最後に、小久保監督は本当にすごいです。たまにではありますけど、僕はスタンドから練習を見るように心がけているんです。少し引いて見ることで気づくことがありますから。監督は、僕がそこから見ているということも気づかれています。とにかく視野が広い……。このチームの組織力ならきっと、後半戦も最高の戦いをしてくれるはずです。裏方として、選手たちを支えていけたらと思います。
(竹村岳 / Gaku Takemura)