体に起きた異変「ここで離脱するわけには…」 競争の渦中、谷川原健太が漏らした“本音”

谷川原健太【写真:竹村岳】
谷川原健太【写真:竹村岳】

3月21日には“開幕投手”有原航平とバッテリー…オープン戦もいよいよ終盤

 オープン戦も23日に全日程が終了し、いよいよ2025年シーズンの開幕が見え始めてきた。小久保裕紀監督は正捕手争いについて「コメントしません」と、静観の姿勢を貫いてきた。「長いですね……」と本音を漏らしたのは、谷川原健太捕手だ。キャンプ中に襲われた異変。そして、競争が続く中で抱いた思いを明かした。

 谷川原にとっては、今季が10年目のシーズン。外野も守りながら多様な起用に応えてきたが、2023年11月に小久保監督から「捕手専念」を通達された。昨オフには長年レギュラーとして君臨してきた甲斐拓也捕手がFA権を行使。巨人に移籍したと同時に、競争が始まった。今月21日の広島戦(みずほPayPayドーム)では、開幕投手を務める有原航平投手とバッテリーを組んだ。3月28日を見据えた“準備”も、いよいよ大詰めという段階に突入している。

「しっかりと開幕戦に出られるように頑張りたいです」。シーズンインまで、1週間を切った。足元を見つめる一方で、本音も漏らす。特別な緊張感の中で戦ってきたからこそ、抱く感情だった。

「今の気持ちは、まだ開幕もしていないのかって……。まだ3月ですもんね」

 競争が繰り返されるプロの世界。日本シリーズ敗退が決まったのが昨年11月3日。甲斐の移籍が発表されたのが12月17日……。節目のたびに首脳陣は“2025年型”の布陣を探し、選手たちも応えようと必死にアピールしてきた。1月の自主トレ、サバイバルが本格化した2月の春季キャンプを終えた。「レギュラーの方々がどう思われているのかわからないですけど、争いをしている人はみんな感じていると思います」。毎日が緊張の連続なのだから、時間を“長く感じて”当然なのかもしれない。

 3月になり、試合を中心としたスケジュールの中で生活を送っている。キャンプ中は翌日に備えて、午後9時には就寝。午前5時30分に目を覚まし、冷たいシャワーを浴びることから1日が始まっていた。「今はナイターからデーゲームがあったりとか、ちょっと変則的じゃないですか。まだ慣れていないですね。試合の後、やることをやっていたら遅くなってしまう時もありますし」という。捕手に専念すると決めてから、どれだけ疲れていようとも、ルーティンは貫いてきた。

「カード頭に、まず(対戦相手の)データをめちゃくちゃ見ます。それで、自分なりにノートを書いて、試合が終わったら反省。どうしたらよかったのかっていうのを、アナリストの方々と話していますね」

 バッターの傾向を頭に入れて、投手と話し合う。考えを一致させた上で試合に臨み、ともに結果を出そうと努力してきた。少しずつ増え続けてきたノート。大切にしているのは自身の“感性”だ。「思ったことを言葉にして記すことは心がけていますね。もちろんデータも見るんですけど、映像とかでどういう反応をしているのか」。数字は大切な要素だが、マスク越しに直接対峙して得た“生の情報”こそ、次回に生きてくる。過去の経験値が、今の谷川原を助けてくれている。

 どんな形でも、離脱は許されない。2月上旬、正木智也外野手や前田悠伍投手らが体調不良で練習を欠席した。敏感にはなっていたものの、谷川原もキャンプ中、発熱のような症状に襲われたという。「測ったら負け。絶対にここで離脱するわけにはいかないと思った」。正捕手争いの真っ只中。この時ばかりは根性を発揮した。「嶺井さんからビタミンCとビタミンDが入っているサプリをもらって、それをめちゃくちゃ飲んで、着込んで寝たら次の日には治っていました」と、1日で回復してみせた。

 負傷以外で離脱してしまえば、悔やんでも悔やみきれない。体調管理にも自分なりに注意を払ってきた。「僕はサプリメントですね。体調が悪くなりそうだったら、ビタミンを飲みまくっていました。あと早く寝るのは(習慣)そうでした。やっぱり防げるものは防ぎたいですよね」。徹底した意識は開幕してからも持ち続けなければならない。「まだ開幕もしていないのか……」という本音から、谷川原が抱く緊張感が伝わってきた。

(竹村岳 / Gaku Takemura)