同期は次々と戦力外に…特別な“3.19” 噛み締めた母のLINE、川村&緒方の胸中

支配下登録で会見を行った際の仲田慶介、緒方理貢、川村友斗(左から)【写真:竹村岳】
支配下登録で会見を行った際の仲田慶介、緒方理貢、川村友斗(左から)【写真:竹村岳】

2024年3月19日に支配下登録された…小久保監督からは和紙をプレゼントされた

 スタートラインに立ってから、1年が過ぎた。2桁を手に入れた特別な日付だ。ソフトバンクは19日、中日とのオープン戦(みずほPayPayドーム)に臨み、1-2で敗戦した。「今日が何の日かわかりますか?」。川村友斗外野手と、緒方理貢外野手に聞いてみた。

 2024年3月19日、2人は支配下登録を勝ち取った。育成から戦力として認められて、まっさらなユニホームを着て会見に参加。昨オフに戦力外通告を受け、西武へ移籍した仲田慶介内野手とともに“育成三銃士”と呼ばれ、無数のフラッシュを浴びた日だ。

「え……!? ホワイトデーじゃないですもんね?」と川村は言う。“答え”を伝えると、開幕1軍入りを争う今、「去年とは違う気持ちで過ごさせてもらっています」と背筋は伸ばした。緒方は「支配下ですよね! オカンからLINEが来ました」と力強い。届いた連絡の内容を明かした。

「『支配下になってから1年が経つね。その時の気持ちを忘れずにプレーしてください』って来ていました。『わかったよ。頑張るね』って返しました。もう1年ですか。その時は『やっと来たか』って感じでしたけど、やっぱり早かったですし、今思えばこの時期はドキドキしながら野球していたなと思います」

 昨年3月18日の夕方、球団から支配下登録という吉報を知らされると、母にすぐ電話した。涙を流して喜んでくれた。親孝行できた大切な日でもある。同じ大卒の同期入団だった中村亮太投手や、佐藤宏樹投手も戦力外通告を受けてホークスを去った。自分自身も「勝負の年だと思っている。今年も自分が結果を残さないといけない」と、毎日が必死であることは変わらない。

 2024年は86試合に出場して打率.173、4打点を記録。主に代走・守備固めとして1年間、1軍に帯同した。この日の中日戦でも、9回1死一塁から代走としてグラウンドへ。二塁に進むと、投球がワンバウンドになった瞬間を見逃さず、三塁を陥れた。「去年の今だったら今日のプレーはできなかったですね。(投手の)投げ出しを見た瞬間、ボールの高さを見て判断しました。いい高さでスタートできればセーフになれる自信があったので」。ライナーバックなど様々な可能性を頭に入れながら、ワイルドピッチを狙っていた。まさに準備が身を結んだプレーだ。

中日戦の試合前に三浦瑞樹と会話する川村友斗(右)【写真:竹村岳】
中日戦の試合前に三浦瑞樹と会話する川村友斗(右)【写真:竹村岳】

 川村にとっては、どうだろうか。19日、中日戦の試合前には同期入団の三浦瑞樹投手と会話するシーンがあった。「瑞樹や仲田は、やっぱり気にはしています。自分のこともやらないといけないですけど、応援しています。(三浦とは)『車買ったの?』とか、『テンポ長いわ』って言ったら、瑞樹も『俺だって投げるところねえんだよ!』って言っていました」と笑顔で話した。春季キャンプ中だった宮崎では、西武戦で仲田が4安打を放った。チームは変わっても、刺激をくれる仲間の存在は今も大切だ。

 オープン戦では打率.167と打撃面で好結果を残せずにいる。18日の中日戦では久々に安打を放ち「ベンチで、小久保(裕紀)監督から『福岡に帰ってきてから、初めてお前のヒット見たわ』って言われました。1本出てよかったです」と明かす。欲しかったHランプを灯しにいった。試合前では右翼、中堅、左翼で必ず打球を追いかけ、バント練習にも時間をかける。打てなくても守備走塁からチームに貢献しようという思いがハッキリと表れている。「普通のことです。まだまだ上手くならないといけないので」と自分自身を見つめた。

 支配下登録を勝ち取った1年前、小久保裕紀監督は「ここからがスタートだぞ」と声をかけられた。直筆メッセージが書かれた和紙をプレゼントされた。緒方は「今もテレビの横に飾っています」と言えば、川村も「棚の上、一番輝いているところに置いてあります」とはにかんだ。2桁を背負う今、立場も少し変わった。開幕1軍入りを目指して、残り3試合を戦う。

(竹村岳 / Gaku Takemura)