今宮健太を「超えたいから」 川瀬晃のリハビリ期間…“頑張る理由”となった周囲の期待

リハビリ組に合流した川瀬晃(左)、今宮健太【写真:上杉あずさ】
リハビリ組に合流した川瀬晃(左)、今宮健太【写真:上杉あずさ】

教育リーグのオリックス戦に出場へ…6日の練習を終えて関西に移動

 準備は、OKだ。リハビリ期間中も、追いかけていたのは憧れの背中だった。今月4日から、川瀬晃内野手が2軍本隊に合流した。6日には春季教育リーグのオリックス戦(杉本商事Bs)に向け、関西へ移動。右膝の状態について「もう大丈夫です」と頷きながら、ネクタイを締めた。「あの人を超えたい」。地道な日々でもモチベーションを失わなかったのは、今宮健太内野手が近くにいたからだ。

 2月の春季キャンプ、第1クール3日目だった。守備練習中に右膝を負傷して離脱。これまで痛みにも耐えながらグラウンドに立ち続けてきた男だが、今回は「無理」だと判断した。以降はリハビリ組として調整。

 2月21日からは、左ふくらはぎを負傷した今宮も筑後に合流した。練習前の集合では、2人の笑顔も見られた。望んだ形ではなかったかもしれないが、同じ時期をリハビリで過ごしてきた。近くに憧れの先輩がいたことは当然、自分にも好影響を与えていたという。

「いつも聞かれますけど、あの人がいるからこそ負けられないというか、頑張れる。あの人を超えたいから、自分もこうやってプロ10年目を迎えられた。あの人を超えられるまでは野球をやっていたいですね」

 今宮自身も少しずつ回復を見せ「そこを諦めるはずがないです。じゃなきゃ、ここまで練習してないですから」と開幕に向けて照準を合わせている。遊撃を争う最大の壁であり、超えていかなければならない先輩。川瀬も「もちろん、悪化しないことが一番ですけど、チームから遅れを取っていることは間違いない。怪我した時はいろいろ考えましたけど、次の日からは1日でも早く治そうという気持ちでした」。すぐに前を向くことができたのは、今宮の存在をはじめ、周囲の支えがあったからだ。

 川瀬が負傷離脱したのは2月3日。その翌日、取材に応じた小久保監督は「ちょっと(川瀬)晃の怪我が心配ですね」と曇った表情で語っていた。2024年は、シーズンを通して1軍に置いた。“替えのきかない存在”だと、誰よりも認めているのが指揮官だ。「もちろんです」と頷きながらも「開幕まで時間はあるし、そこに間に合ってくれたら。野球人生が今年で終わるわけではないですし、そう考えた時にということも頭には入れながら対応したいと思います」と見通していた。

 病院での診断結果を踏まえ、右膝の状態を小久保監督に報告しにいった。かけられた言葉は「しっかり治せ」だった。「その声をもらった時に切り替えはできました」。川瀬にとって、今季がプロ10年目。自覚たっぷりに背筋を伸ばした。

「すごく温かい言葉をもらったので。期待されているかどうかは自分ではわからないですけど、とにかく1日でも早く現場に戻ること。もちろん怪我をしたのですぐに1軍には呼ばれないとわかっていた。リハビリして、最初は3軍からになると思っていたので、まずはそこに早く合流できるように、と意識しました。ブレーキというよりは、常にアクセルを踏んで(ここまで調整してきた)という感じでした」

春季教育リーグのオリックス戦(杉本商事Bs)に向け関西に移動する川瀬晃【写真:冨田成美】
春季教育リーグのオリックス戦(杉本商事Bs)に向け関西に移動する川瀬晃【写真:冨田成美】

 小久保監督も庄子雄大内野手やジーター・ダウンズ内野手が「大チャンス」だと言及した。誰かのポジションが空けば、誰かが奪う世界。無念の離脱だった中、川瀬も「怪我をしたこと自体が悔しかったです。自分がしてしまったことなので、受け止めながら。他の人のそういうこと(評価)より、どうやったら自分が早く現場に戻れるかを考えてきました」という。昨季はキャリアハイの105試合に出場。自分の力を出せればきっと、今からでも開幕争いに飛び込んでいける。

 毎朝起きれば、まずは右膝の確認。日に日に状態が上向いていることを確かめながら、“最速”の復帰を目指してきた。「膝回りの筋肉は鍛えて、機能させるトレーニングはしてきました。上半身のウエートも見直すことができたかなと思います」。多様な起用に応え、チームを救ってきた。替えのきかない存在として、早く1軍に貢献したい。

(竹村岳 / Gaku Takemura)