谷川原健太とバッテリーを組んで3回無失点…有原航平も降板後に納得顔
すでに開幕投手が決まっている右腕は、“相棒”の選定に何を思うのか。ソフトバンクは5日、ヤクルトとのオープン戦(みずほPayPayドーム)に3-1で勝利した。先発した有原航平投手は、3回無失点。バッテリーを組んだ谷川原健太捕手とともに、立ち上がりから試合を作った。甲斐拓也捕手がFA移籍したことで、激しさを増す正捕手争い。有原が重要視する真意に迫った。
初回、先頭打者の塩見に対して150キロを計測する。3球三振でスタートすると、2死からは村上を打席に迎えた。最後は変化球で空振り三振に仕留め、3者凡退。2、3回もゼロを並べて35球、無失点で「しっかり自分のピッチングができるかを考えていました。今日はよかったと思います」と納得の表情だ。3月28日、ロッテとの開幕戦に向けて、一歩ずつ丁寧に調整を続けている。
小久保裕紀監督は春季キャンプ中から捕手争いについて「コメントしません」と静観する姿勢を貫いてきた。そんな中、注目の発言があったのは3月2日。「バッテリーはかなり回します。これからの実戦で、ピッチャーが感じることもあるでしょうし。要望に全て応えられるわけじゃないとは思うんですけど、一定の参考にはなるかなと。ピッチャーとキャッチャーで信頼関係が築けない限りはチームとしては。そこが全てだと思うので。その作業にこれから入っていきますね」。
投手の意見を参考にしながら、捕手を決めていく。当然、バッテリーのどちらも重要なポジションだが、お互いの信頼度が結果にも繋がるのは間違いない。すでに開幕のマウンドに上がることが決まっている有原は、何を大切にして捕手と向き合っていくのか。
「やっぱりコミュニケーションを取って、作戦面もそうですけど、どれだけ試合に対して準備していけるかが大事だと思います。実際、みんなほとんど組んだことがないので、やってみないとわからない部分もありますから。どのキャッチャーになっても、試合に勝つチャンスを作れるようにとは思っています」
この日の試合。3回無死一、二塁から塩見を三ゴロ併殺に打ち取った。「ボール自体は思ったところではなかったですけど、結果はゴロを打たせることができた」と、イメージの範囲内だった。ピンチの芽を摘んだのだから、バッテリーとしても最高の結果だ。谷川原との投球についても「今日は全球種も投げましたし、ベンチでも話し合いをしながら。ランナーがいてもしっかり止めてくれたので」と頷いて振り返る。
倉野信次1軍投手コーチ(チーフ)兼ヘッドコーディネーター(投手)は、投手側の目線を語る。「どういう形になるかはわからない」と前置きした上で「監督がおっしゃるように、投手がどう思っているかは材料になる。常々そういう話は選手たちとしています」と明かした。徹底的な準備や研究を重ねて、バッテリーが一緒になって相手バッターへと立ち向かっていく。大切になるのは、18.44メートルの間で信頼を交わせるかどうか、だ。
「結果はわからないですけど、不安なく投げるのが一番だと僕自身は思いますけどね。よく城島(健司)CBOは『キャッチャーは指で語るんだ』って言っていました。サインに自信がないんじゃないか……と、そう思ってしまうと投手は不安になりますから。それは僕も経験しているので、想像はできます」
有原にとっては、ホークスに移籍して今季が3年目。2023年は17試合、2024年は26試合に登板したが、先発マスクをかぶったのは全て甲斐だった。どの捕手と組むことになろうと、必要なのは意思疎通。「そういうところを見ている投手はいます。話し合って、その内容に沿っていく中で、捕手もバッターの反応は見ると思うので、自信を持って(サインを)出してほしいです」と同調した。豊富な球種を操るが、決め球の1つはチェンジアップという“落ち球”。ピンチの場面で、お互いの信頼がきっとサイン1つにも表れる。
高谷裕亮バッテリーコーチも「信頼して投げてもらえるキャッチャーになった方がいい。いろんな人と関係を築けるように準備しているところです」と話す。ワンバウンドを止められるか、打席に立っているバッターに対して、攻めのイメージを共有できているか……。呼吸が合うかどうかが、投手の“投げやすさ”にも繋がっていくはず。「いろいろ見ながら、意見を聞きながらになります」と、選定はもう少し続きそうだ。
有原の次回登板は、また別の捕手と組むことになりそうだ。小久保監督は「そうなると思います」と明かす。谷川原も「もしかしたら(オープン戦ではもう)組めないというのはありました。有原さんがどう思ったのかわからないですけど、僕の中ではいいイメージで終われました」と胸を張る。エースのハートを誰が射止めるのか、まだまだ目が離せない。
(竹村岳 / Gaku Takemura)