ホークスは「もっとピリついているかと」 上沢直之の本音…入団で感じた良さと“ギャップ”

インタビューに応じた上沢直之【写真:冨田成美】
インタビューに応じた上沢直之【写真:冨田成美】

鷹フルが上沢直之を単独インタビュー…第1回のテーマは「ホークスの雰囲気」

 鷹フルは、上沢直之投手の単独インタビューを行いました。第1回のテーマは「ホークスの雰囲気」について迫っていきます。移籍1年目の右腕。「もっとピリついているかと……」と本音も覗かせる中、鷹の一員になったことで感じたギャップを明かしました。かつて対戦相手として感じていたのは、“圧倒的”な空気感でした。

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 日本ハムで12年、米国で1年とキャリアを積み上げてきた。新天地は福岡。春季キャンプも打ち上げ「チームにはもうだいぶ慣れました」と笑顔で語った。他球団での経験も豊富だからこそ、ホークスにしかないものもハッキリと認識できる。フレンドリーかつ、厳しさも兼ねた空気感は1か月間でしっかりと伝わってきた。

 1月31日、キャンプイン前日。自室に到着すると、まっさらな10番のユニホームが置いてある。「一応、着てみました。写真を撮って家族には送りました」と笑顔で話す。「ホテルで部屋の隣が、全員新入団の選手だったんです。僕がいて伊藤(優輔)、濱口(遥大)、上茶谷(大河)で横並びだったので。そこまで緊張とかはしなかったですね」。意図的だったのか、思わぬところから馴染みやすい環境が整えられていた。

 シーズンに備える大切な期間。「“転校生”のような感じでした」とキャンプインを振り返る。又吉克樹投手を中心に、チームメートから歩み寄ってくれたことですぐに溶け込めた。「いろんな人と関係は深まったと思いますけどね。木村(光)とかは一緒にいた感じがしますね。有原(航平)さんはもともと関係があったので。東浜(巨)さん、又吉(克樹)さんが話しかけてくれたりしたので」。上沢自身も生真面目ではあるが、人見知りするわけではない。豊富な経験を持つ右腕は、少しずつ輪の中に入っていけた。

 大卒3年目右腕の木村光は「上沢さん」と呼び、時には「アニキ」と声をかけることも。新入団の選手が馴染めるように年上の先輩が雰囲気を作り、後輩たちはリスペクトを抱きながら、グイグイと距離を詰めてくる。ホークスならではの空気を感じられた2月だった。休日も選手同士で過ごすことが多かったそうで「投手会もありましたし、若い選手と話す機会はありました。ゴルフにも行けました」と、充実の時間だった。

 日本ハム時代の2023年、リーグトップの170イニングを経験した。ホークス戦では5試合に登板して2勝1敗、防御率3.00という成績。対戦相手として感じていたのは、“常勝”ならではの威圧感だった。

「ホークスは勝って当たり前というか、きっとファンの方もそういうふうに見ているし、選手もそういうものがある。その感じは、投げながら思っていました。みんな(どの球団も)負けたくないんですけど、ホークスが負けている時は、『負けていることが本当にやばそうな感じ』はしましたね」

 実際にホークスの一員になってみると「ちょっと想像していたのとは違いました。ピリついている雰囲気なのかなと思っていたんですけど、そんなことはなかったです」と、いい意味でイメージは覆った。「僕は試合の時しか、対戦相手として勝負をしたことしかないですし。練習中はやっぱりピッチャーと一緒にいることが多いんですけど、年齢関係なく、ホークスはみんな仲がいいなって感じました」と嬉しそうに語った。2月に経験した全ては、今後の自分をきっと助けてくれる。

 キャンプ中、2011年ドラフトの同期入団でもある近藤健介外野手とも食事に行った。かつての同僚と福岡で再会することになったが「そこは変わらないかなと。昔から付き合いもあるので、新鮮な気持ちは特にないです(笑)」とおどけて言う。競争を勝ち抜いた先に、開幕が待っている。「いろんな人の支えのおかげで、すごくやりやすく練習させてもらいました。3月に近づくにつれて感じるものはありますし、もっといい状態に持っていきたい思いは強いです」。ホークスの一員として、優勝という歓喜を味わいたい。

(竹村岳 / Gaku Takemura)