捕球音と感覚、東浜巨が突き詰める“最後の1球” ブルペンから見える実直な性格

東浜巨【写真:冨田成美】
東浜巨【写真:冨田成美】

張本優大ブルペン捕手は東浜巨と同期入団…裏方目線で語る投手の特徴とは

 ブルペンには、投手それぞれの「こだわり」が隠されている。「個性が出ると思います。特にA組以上の投手は、いい球だけを求めている人が少ないです。テーマをやっている人ばかりですね」と語ったのが、張本優大ブルペン捕手だ。同期入団だからこそ知る東浜巨投手の一面。納得のいく“最後の1球”を、2人の言葉から紐解いていく。

 張本ブルペン捕手は2013年育成ドラフト4位で佛教大からプロ入りした。2016年7月に支配下登録されたものの1軍出場はなく、2019年オフに戦力外通告を受けて現役を引退した。裏方さんに転身して、今季が6年目。「一瞬でもミットを止めて、投げたコースがわかりやすいようなキャッチングは心掛けています。全球、気を抜けないですね」と、ボールを通しても投手との意思疎通を図っている。

 同期で1位指名を受けて、亜大からホークス入りしたのが東浜だ。張本ブルペン捕手は「巨もストライク、ボールの投げ分けだとか、すごく考えて投げていますね」と言う。実直な性格が詰まっているのが、“最後の1球”だ。

「巨は、最後は気持ちよく終わりたいタイプなので、『あと1球』『もう1球』ってなる時がありますね。構えたコースにきても僕がいい音を出してあげられなかったら、もう1球ってなりますし。全球そうなんですけど、僕も集中します」

 ブルペンを締めくくる最後の1球。感覚さえよければ終わる投手もいれば、“おかわり”する投手も珍しくない。東浜は、捕手の捕球音が響かなければ「もう1球」となることも。お互いが頷いて振り返られるように、感覚から音まで、全てを大切にしている。「そこも含めての調整ですし、こだわっているんだと思いますよ」と張本ブルペン捕手。数えきれないほどの球を受けてきても、初球から最後まで集中力は欠かさない。

 東浜本人にも聞いてみた。「納得いって終わりたいというところですね。自分の今日の締めくくりなので、自分が納得いく球を投げられたら終わり、投げられなかったらもう1球、ですね」。時には自らを「練習しすぎる」と表現したこともある。“投げすぎ”のイメージについては「意外とそうじゃないですよ。大体球数を決めていて、これくらい投げられたらいいなというのが自分の中でもあります。そこからプラス10球になることとかはありますけど、大枠を外れることはないです」と続けて明かした。

 ロベルト・オスナ投手なら、ブルペンで完全に試合を想定して投げ込む。一方で、あくまでも練習の延長だという位置付けの投手もいる。東浜は「半々です。試合のためのブルペンですし、練習でしかないといえば確かにそうかもしれませんけど。でも出力とかは試合の方が出ますし、練習(目的)がメーンです」と意図を説明した。今年も、チェンジアップに磨きをかける日々。22日、オリックスとのオープン戦(アイビースタジアム)では右打者からチェンジアップで空振り三振を奪った。成果が表れた瞬間でもあった。

張本優大ブルペン捕手【写真:竹村岳】
張本優大ブルペン捕手【写真:竹村岳】

 第1クールはブルペン投球から始まり打撃投手、シート打撃、実戦登板と少しずつ段階を踏んでいく春季キャンプ。打者相手の練習を終えた後、ほとんどの投手がブルペンに足を運んで“おかわり”をする。張本ブルペン捕手も「ちょっとの誤差なんだと思うんですけど、それをなるべく減らすことですよね。A組だとそれが普通です。ライブBPをやった後も投げて、次の日も投げる人もいますし。自分の中で消化というか、処理すること。じゃないと、やっぱりモヤモヤするじゃないですか」と代弁する。予習から復習まで、一流であればあるほど絶対に怠らないルーティンだ。

 春季キャンプも手締めを終え、3月も少しずつ近づいてきた。キャンプ全体を通して東浜は「600球だけは超えたいなというざっくりしたイメージです。球数というよりは、そのクールでどうやって作っていくかを意識しています」と振り返る。練習ではとことんまで突き詰めて、マウンドでは思う存分に野球を楽しむ。それぞれのこだわりが、試合で表現されるのが楽しみだ。

(竹村岳 / Gaku Takemura)