野手が主催する極めて珍しい投手会は、宮崎市内の焼き肉店で開催された。選手たちは食事を満喫しながらも、それぞれに交友を深めた。「1日でも早くチームに溶け込んでほしい」——。そんな今宮の計らいに感謝を口にしたのは上沢だった。
「若い投手たちとも仲良くなれましたし、今宮さんが本当にチームのことを考えているんだなというのが分かりましたね」
NPB通算70勝の実績を誇る右腕でさえも、新天地でのプレーに不安はあった。春季キャンプの序盤で同僚と仲を深めるきっかけを、2学年上の今宮が作ってくれた。「日本ハム時代は対戦していて嫌な選手でしたね。守備はうまいし、本当にいい選手だなと」。かつての難敵がこれからはチームメートになる。「心強いですね」と笑みを浮かべた。
「ホークスというチームについての話も聞けましたし、そういう場を設けてもらえたっていうだけですごくありがたかったですね。今宮さんはすごく優しかったですし、本当にチームのことを考えられているんだなって」
そう振り返ったのは、こちらも今季からホークスに加入した浜口だ。「これまでは、どちらかというと職人タイプというか、寡黙な感じなのかなと思っていましたけど。すごく熱い方で、勝利に対する情熱がある方なんだなと思いましたね」。今宮のイメージは大きく変わったという。
伊藤も今宮への感謝は尽きなかった。「食事の場で交流を深められたことが、一番大きかったですね。やっぱり野球をしている時だけじゃなくて、そういうところで話す方がコミュニケーションは深まりやすいかなと思うので。今宮さんからは『ジャイアンツってどうなの』とか、『こっちにきてどうなの』とか話せました」。
幹事を務めたのが津森宥紀投手だった。メンバーに声掛けをし、店も決めたという右腕が、普段から仲のいい今宮の印象的な言葉を明かしてくれた。
「『野手は野手で思うことはあるけど、ピッチャーには言いづらい部分もあるから。ご飯とかでコミュニケーションを取っておけば、試合で声も掛けやすい』って言われてましたね。『交流がなかったら、試合でマウンドに来てほしいタイプなのか、来てほしくないタイプなのかわからない』と。そういう意味で、ご飯にいけてよかったんじゃないかなと思います」
シーズン中に幾度となく目にした今宮による投手への声掛け。試合の流れを左右する一言を口にできるのも、ひとえに日頃からの関係性作りがあるからだ。チームリーダーが一肌脱いだ「宮崎の夜」が、投手陣に好影響を与えるのは間違いないだろう。