倉野コーチ断言、キャンプ中「評価はしない」 A組とB組以下では別…激白した競争の内情

単独インタビューに応じた倉野信次1軍投手コーチ(チーフ)兼ヘッドコーディネーター(投手)【写真:冨田成美】
単独インタビューに応じた倉野信次1軍投手コーチ(チーフ)兼ヘッドコーディネーター(投手)【写真:冨田成美】

先発4人、中継ぎは6人が開幕1軍入り当確…「もちろん監督とも話している」

 鷹フルは、倉野信次1軍投手コーチ(チーフ)兼ヘッドコーディネーター(投手)の単独インタビューを行いました。第4回のテーマは「競争」について、です。キャンプインの前、選手たちに伝えた言葉を明かしました。倉野コーチは、選手たちがどうしても首脳陣の評価を気にしてしまうことを、誰よりも理解していました。

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 チーム内の現状を整理してみる。先発では、有原航平投手が2年連続の開幕投手に内定。リバン・モイネロ投手、カーター・スチュワート・ジュニア投手、大関友久投手もローテーション入りが当確となっている。首脳陣は故障を回避し、余裕を持たせるためにも「7人か、8人」と候補について言及しているが、週6試合と考えれば残りは2枠。大津亮介投手や上沢直之投手、東浜巨投手らが争っているという状況だ。

 中継ぎではロベルト・オスナ投手、ダーウィンゾン・ヘルナンデス投手、松本裕樹投手がS組として独自調整中。この3人に加えて小久保裕紀監督は藤井皓哉投手、杉山一樹投手、尾形崇斗投手の名前も挙げるなど、計6人の開幕1軍入りは確実と言っていい。指揮官は「何回も言いますけど、勝ちパターンがある程度確立されている中、普通に考えても中継ぎの9人枠に入るのは難しい。チーム内競争がない限りは発展はないのでいいことなんですけど、選手にとっては非常に狭き門になっていると思います」とまさに“嬉しい悲鳴”だ。

 開幕から1軍で戦ってもらう先発4人、中継ぎ6人について倉野コーチは 「もちろん、監督とも話をしていることですからね」と同調した。「ただ確実に、計算通りに行くかどうかはわからない。そこに対するリスクマネジメントは考えています」。あらゆる事態に備えて第2、第3の作戦を考えておくのも、首脳陣の大切な役割だ。

「激しいと思いますよ。競争相手はいっぱいいるんですけど、高いレベルで競争してもらわないと、選手層にならないんですよね。だからいかにレベルを引き上げられるか。レベル、質を上げるところが僕らの課題だと思います」

 昨年の日本シリーズでは、6試合で計33失点。松本裕、藤井らを欠いた戦いで「結果的に選手層が薄かった」と痛感させられた。残りの枠を争うだけでは、物足りない。より高次元の領域で、選手同士が火花を散らすことが、チームを活性化させるためにも必要なことだ。

 1年の礎を築く2月の春季キャンプ。選手たちにとっても、キャンプインは競争の始まりを意味する。1月31日、倉野コーチは投手陣にこんなことを伝えた。

「まず、A組の選手には言ったんですけど、キャンプ中に『評価』はしません。良いものは印象として残しますけど、悪いものは一切、評価しない。『思う存分、試してくれ』と」

 選手にとって、首脳陣の評価はどうしても気になるもの。最初から自分のパフォーマンスに集中してもらうために、あえて「悪い評価はしない」とハッキリ言った。「この時期に結果ばかりを意識してしまうと、自分がやりたいことも取り組めないだろうし。2月にピーキングをするのは正直、まだ早いんですよ。中旬や下旬でも、それは同じです」と続ける。最も大切なのはシーズンでの結果。競争を勝ち抜く意識は重要だが、アクセルとブレーキをコントロールさせようと、首脳陣も工夫を重ねている。

 一方でB組以下となると、話は別だ。「B組、C組の投手には話をしたんですけど、いかに仕上げを早くしてチャンスをもらえるかが勝負。『これから1軍の枠に入ってやろう』と思っている人は、早く仕上げたもの勝ちなんですよ」。開幕1軍とは、首脳陣もその年を象徴するメンバーを選出する。A組に入れなかった選手が“逆転”でチャンスをもらいたいのなら、相応のアピールが必要だ。だからキャンプ前に明確に伝え、尻を叩いた。

「A組の投手に関しては、ピークをそこ(2月)に持ってきてもらうと、大事な本番で落ちていくので。そこは、2月中は悪い評価は気にしませんよ、悪い評価はしないですよっていうのはそういうところです」

“新星”の誕生も待ち望む2月。具体的に期待したい選手についても、倉野コーチらしく言及した。「僕はこの時期、特定の名前を挙げたくないんです。リップサービスみたいな形で、挙げることもあるんですけど、本当のことは言わないですよね。名前が出なかった選手のモチベーションにも関わる。名前が出ないから余計に頑張れる、見返してやろうみたいなのも期待するし。そういうのはあるにせよ、どっちにしろ言わないです」。ファンにとっても気になるところだが……。全員にチャンスがあることだけは間違いない。

(竹村岳 / Gaku Takemura)