日本Sの悪夢…投手陣に“足りなかった”要素 倉野コーチが振り返る4連敗の裏側

単独インタビューに応じた倉野信次1軍投手コーチ(チーフ)兼ヘッドコーディネーター(投手)【写真:冨田成美】
単独インタビューに応じた倉野信次1軍投手コーチ(チーフ)兼ヘッドコーディネーター(投手)【写真:冨田成美】

鷹フルが単独インタビュー…日本シリーズの敗退に「もやもやした部分あった」

 鷹フルは、倉野信次1軍投手コーチ(チーフ)兼ヘッドコーディネーター(投手)の単独インタビューを行いました。第3回のテーマは、昨年の日本シリーズについて。なぜ3戦目以降、4連敗という結果に終わってしまったのか? 倉野コーチが具体的な要因と、そうなった経緯について口を開きました。「不十分だった」という反省の思い――。

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 昨シーズンの投手成績を振り返れば、間違いなくパ・リーグトップの数字を残していた。先発防御率2.50、救援防御率2.58はいずれもリーグ1位の成績。運用においてうまくいった部分について、倉野コーチは「先発も中継ぎも、先の先までしっかりとシミュレーションをして、いろんなことに対応できたことですね」と胸を張る。屋外での試合なら雨天中止の可能性も必ず視野に入れ、常に盤石でいられるように試行錯誤してきた。

 一方で課題についても口にする。「うまくいけばという反面、怪我人とかアクシデントを含めた対応でしたね。できるだけのものは、作っていたつもり、対応できていたつもりが、できていなかったということを痛感しましたね」と反省の思いは尽きない。苦い経験を味わったのは、まさに日本シリーズの4連敗だった。

 2024年の戦いは、11月3日に終わった。パ・リーグを制し、クライマックス・シリーズも勝ち上がった。日本シリーズ進出を決めたが、DeNAを相手に3戦目から4連敗。倉野コーチも「正直、最後にああいう形で負けて、もやもやしている部分があった」と認める。時間がたった今、ホークス投手陣には何が足りなかったのかを振り返る。

「結果的に選手層が薄かった。1番目の層、主力どころの層のレベルはかなり高いと思っているし、だからその成績だったと思うんです。でも、その次の層、次の次の層ってところにレベルの差があったというところです。それは先発にしても、中継ぎにしても。層を厚くできなかった、レベルの底上げが不十分だったというところに尽きるのかなと思います」

 9月1日に藤井皓哉投手が、5日に松本裕樹投手が登録抹消。松本裕は昨年12月、日本シリーズでも失点を喫した尾形崇斗投手や岩井俊介投手に対し「シーズン中にやっていなかったことを、みんなにやらせてしまったなと思いました」と反省の思いを口にした。倉野コーチも「他のチームと比べてもかなり充実している自負はあったんですけど、その中でも次の層というか。それがうまくいかなかったというのはありますね」と続けて語る。

 倉野コーチは「自分の中ではちゃんと分析はできています。そこに関しては言えないですけどね」という。約3か月のオフは、自分なりに答えのようなものを探す日々だった。「選手に対する分析、チームに対する分析、僕自身に対する分析があります。それも含めて、全部フィードバックできた。良い悪いは別にして、(結果的に選手層が薄かったのは)『なんで』か、だけじゃない。あえてそうなった部分もある」。含みを持たせた表現だが、本格的な改善がキャンプインと同時にスタートした。

 オフは選手にとって鍛錬の期間。一方、倉野コーチは「講演活動と家族。あとはとにかく人に会いまくることです。オフにしかできないことが、僕のライフワークです」と話す。米国にも足を運び、多くの知人とも再会してきた。かつての教え子でもある千賀滉大投手とも会い「メジャーリーグの話ってすごく参考に、刺激になる部分がたくさんあるので、すごくいい時間でした」と旧交を温めた。海を渡るまで、指導者として積み上げた日本の13年間。そして米国で修行した2年間、どちらにも自分のルーツはある。

 誰よりも感性は鋭く、探究心に忠実に生きてきた倉野コーチ。オフに人と会いまくったことで、日本シリーズで味わった「もやもやも全て解消されました」。新しい刺激を入れ、気持ちが晴れるきっかけを自ら迎えにいった。「答えって正解じゃないですか。正解かどうかはわからないですけど、僕が気持ちの整理ができて、新たなモチベーションを持って今シーズンに挑める心境は完全に作れたと思います」と2025年を迎えた。今年こそ日本一となって、もっと笑顔のオフを過ごしたい。

「友達と会って、いろんなことを話して、また自分の勉強になったり。そういう目的でアメリカに行きます。もちろん日本も含めて、モチベーションが上がるようなオフにすることができました」

 最強の投手陣を築くことが、目標の1つ。絶対に挑戦はやめない。2025年も、倉野コーチは進み続ける。

(竹村岳 / Gaku Takemura)