山川穂高、Xは「しばらく見ていない」 情報社会で大切な“1対1”…鳴らす「警鐘」とは

自主トレを公開した山川穂高【写真:竹村岳】
自主トレを公開した山川穂高【写真:竹村岳】

YouTubeからヒントを得る若手も…発信者の「思いまでは汲み取れない」

 山川穂高内野手が2024年からホークスの一員となって以降、鷹フルで初めての単独インタビューを行いました。2023年オフ、西武から国内FA権を行使して加入したスラッガー。全3回掲載のインタビュー第2弾、テーマは「SNSを見ない理由」です。情報に溢れている現在において、若手たちに向けて鳴らした“警鐘”に迫っていきます。「本質は自分で見抜かないといけない」――。

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 チーム内では柳田悠岐外野手や、周東佑京内野手。海を越えれば、大谷翔平投手や山本由伸投手ですらアカウントを持つ時代だ。SNSは、もはやプロ野球選手にとっても欠かせないツールとなった。山川がスマートフォンの中に残しているのは、インスタグラムだけ。「FacebookやTwitter(X)とか、TikTokとかもしばらく見ていないです」という。

 圧倒的な練習量で、今の地位を築き上げた。1月の自主トレ中も、愛弟子のリチャード内野手には「3倍、4倍」のメニューを課してきたが、自分の若手時代と比較すれば「僕はもっとやっていました。それは自信を持って言います」とキッパリだ。今や、YouTubeからでも打撃のヒントを得られる時代。情報収集の“経路”について、山川は警鐘を鳴らす。

「うまく飲み込めて、タイミングがあってハマることはあると思います。ただ本質は自分で見抜かないといけないですし、最終的には自分のものは自分で掴んでいかないといけないと僕は思います。じゃあこの人が教えている打ち方で今年は行きます、来年もそれで行きましょうでは打てないと思うんですよね」

 山川に置き換えるなら、リチャードと2か月もの間、自主トレをともにした。目の前にいるのだから当然、課題も変化も一番間近で見ている。「誰がどう見ても体が締まった」と、鍛錬の効果は打撃練習にもしっかりと表れていた。

 一方で、SNSでの情報発信は、あくまでも不特定多数の人に向けたもの。決して“1対1のアドバイス”というわけではない。山川も「否定するわけではない」と前置きしつつも、プロ野球選手が技術を向上するための手段としては「そこには、その(情報発信する)人たちの思いが入っていないじゃないですか。そこまで汲み取れないわけですし」と言及した。本質を見抜き、自分だけの技術を作り上げていかないといけないのは、いつの時代も同じだ。

山川穂高(左)と西武・中村剛也【写真:竹村岳】
山川穂高(左)と西武・中村剛也【写真:竹村岳】

 通算252本塁打を誇り、タイトルが4度獲得。そんな山川がリスペクトするアーチストこそ、西武時代のチームメートでもある中村剛也内野手だ。通算478発の“おかわり君”。山賊打線の一員として、大先輩に少しでも近づこうと本気で努力してきたからこそ、“思い”の重要性を誰よりも理解している。

「例えば、中村(剛也)さんがいるじゃないですか。中村さんのバッティングを見て『こういうふうにやっているんだ』って憶測と、実際に会ってこういう練習にはこういう意味があるっていうのは、まるで違う。会ってみて、なぜああいう打ち方になったのか、なぜホームラン王を6回も獲れているのか。それは本人に直接聞いて、1回だけじゃなくて何回も聞いて、なおかつ自分でやっていかないと体現できないですからね」

 少しずつSNSから離れていったのは数年前からだという。2018年、2019年には2年連続で本塁打王に輝くなど、日本屈指のアーチストになったが「注目を浴びるから、いらないんでしょうね。試合が終わって、ご飯を食べて、お酒を飲んで、寝て、また野球をやればいい。それが一番楽しいです。見る時間がないのもありますね」。より高みを目指そうと思えば、思考は野球に染まっていった。求めるのは、プロとしてグラウンドで結果を出すことだけだ。

「意味があればいいですけどね。SNSも、娯楽の一種じゃないですか。人生を豊かにするための手段、方法であれば使いますけど。それは人と関わっていくことも、全てそうです。必要な人というか、全ては自分の人生を有意義にすることが大事だと思うので。それ以外のことは時間の無駄ですし、それで感情的になることがあるのであれば、必要ないのかなと思います」

 ダイヤモンドを1周する快感。山川はアーチを描くことを「生き様」だと表現する。「見る必要、ないんじゃないですかね。SNSがなくても、ホームラン王は獲れますから」。5度目の“キング”を目指す道。ホームランこそ、山川穂高の全てだ。

(竹村岳 / Gaku Takemura)