2025年は、もうルーキーではない。1人の戦力として、チームの勝利に貢献するつもりだ。前田悠伍投手は、カブス・今永昇太投手と行っていた高知県での自主トレを打ち上げ、福岡に戻ってきた。鷹フルの単独取材に明かしたのは、忘れられない悔しさ、2年目の決意だ。プロ野球は「すぐに切られる世界なので」――。
2023年秋のドラフトで1位指名を受け、大阪桐蔭高からホークスに入団した。神宮大会で2度、2年春の甲子園で1度、計3度の全国制覇を成し遂げて、プロの世界に飛び込んだ。ウエスタン・リーグでは12試合に登板して4勝1敗、防御率1.94。経験を積むだけではなく、自らの能力を刻み込んだシーズンとなった。
昨年11月の契約更改、「2月1日から勝負してもらうと言われています」と明言。1年目は首脳陣から「特別強化プログラム」を課されてきたが「何も言われていないですけど、来年(2025年)からはなくなると思います。体作りもある程度のところまできたので」と話していた。どんな位置付けだと心に決めて、2年目に飛び込もうとしているのか。
「結果を出していかないと、すぐに切られてしまう世界。全てわかっているわけではないですけど、プロ野球は厳しい世界だと思う。周りに合わせることなく自分の実力を出していかないと、周りには負けてしまう。毎年新しい選手も入ってくるので、ずっと1軍で活躍できるような1年間にしたいです」
同期入団の大山凌投手や岩井俊介投手らは、前田悠の人柄に「ガキンチョですよ」と口を揃える。高卒1年目だった昨季、後輩としてたくさんのチームメートに可愛がってもらった。一方で、1軍広報に転身した鍬原拓也投手ら、お世話になった先輩は戦力外通告も受けた。辛い“別れ”も経験して「めちゃくちゃ泣きました」――。ドラフト1位で入団し、誰もが期待をかける存在ではあるものの、結果を残せなければクビを切られる世界だとも重く理解している。
道標は、胸に刻まれた悔しさだ。プロ初登板は10月1日のオリックス戦(みずほPayPayドーム)で、結果は3回6失点。小久保裕紀監督からは「正直、通用していない」とすら言われた。ルーキーイヤーを防御率18.00で終えたことは、引退してからも消えない事実。結果的にチームは勝利したが、“あの日”味わった気持ちは、オフシーズンの間も自分を突き動かしてくれた。
「負けてはいないですけど、自分にとってはほとんど負け。あの試合を忘れてしまったらダメだと思うので、通用しなかった事実と、自分の中でももっとパフォーマンスを出せたと思います。次しっかりと抑えるために、何が足りないのかを考えて今永さんのところにもいかせてもらった。得たものもたくさんあるので、もうそういう思いをしないように全力でぶつかっていきたいですね」
年が明けて、1月5日からは高知で今永との自主トレをスタートさせた。現地に到着したのは4日。「ちょっとグラウンドを見学して、ホテルでミーティングをしました。『こういうことを中心にやっていきます』という話があったので、すんなりと次の日から取り組むことができました」。トレーニング自体も「キツかったです」と振り返るが、真っすぐな志を共有していたから、迷うことは一切なかった。
「意味合いがしっかりとわかっていました。これ(練習)は立っている時に意識するとか、目的がハッキリとあったので。キツいんですけど、キツくないというか。すごく実になったと思います」
首脳陣からはオフに入る前、課題を受け取った。「僕は真っすぐのことを言われました。もっと平均球速を強くすること。それで今永さんのところにも行かせてもらったので」。2月1日から、本格的に競争がスタートする。前田悠伍の表情は、熱い志に満ちていた。