三森大貴がトレードも「僕の中では変わらない」 廣瀬隆太が理解する1軍定着への“条件”

自主トレを公開した廣瀬隆太【写真:川村虎大】
自主トレを公開した廣瀬隆太【写真:川村虎大】

二塁の定位置争い「牧原さんを超えないと、僕は1軍に上がれないんです」

 1番にならなければ意味がない。静かな口調に確固たる意志が感じ取れた。2年目の廣瀬隆太内野手は今オフ、母校・慶大のグラウンドで自主トレを行なっている。昨年12月に三森大貴内野手がDeNAへトレードで移籍。同じ二塁のライバルだったが「正直、僕の中ではあまり変わらないです」。意識することはほとんどなかった。

 12日午後5時半、すでに陽も落ちたグラウンドでナイターの明かりを頼りに、黙々とノックをこなした。大学時代の後輩や同期に手伝ってもらい、基本的にはマンツーマン。「やりたいことができないのが嫌なので」。群れずに自らのやるべきことに集中している。

 廣瀬にとって1年目の昨季は酸いも甘いも経験したシーズンだった。5月に牧原大成内野手、三森の相次ぐ負傷で1軍昇格のチャンスを得ると、6月には14日の本拠地・阪神戦でプロ初アーチをマークするなど、7試合連続安打を経験した。一方で、7月は月間打率.083(24打数2安打)と苦しみ、牧原大の復帰とともに2軍降格。そのまま2軍でシーズンを終えた。

 課題は構えた時のトップの位置の“再現性”だった。「自分からは見えていない部分が毎回違う動きになってしまっていた」。6月は月間打率.319(69打数22安打)と好調だったが、7月は不振に。毎回同じ打撃をすることができず、好不調の波がはっきりとしていた。

 2023年ドラフト3位で慶大から入団。同年12月に行われた新人入団会見では「セカンドができるのが僕の長所でもあると思うので。希少なポジションを奪いたい」と二塁へのこだわりを語っていた。あれから1年。今でもその気持ちは変わりない。

「ファースト、サードは外国人の補強もできますし、FAで入ってくることもある。長くプロでやっていくためにはセカンドも守れた方が絶対プラスだと思うんです」

 昨季、チームでは牧原大が最多の67試合で二塁を守り、廣瀬が33試合、三森が19試合と続いた。三森が移籍したことで定位置争いのライバルが一人減ったとも言えるが、廣瀬が意識することはなかった。「結局は今一番セカンドで出ているのは牧原さんで。牧原さんを超えないと、僕は1軍に上がれないんです」。

 2番目に試合に出ているから、と驕っているわけでは決してない。プロで1年間プレーし、自らを客観的に見ることができた。球団が求めているのは右の長距離砲としての姿。「僕は途中から出る選手ではない。1軍で試合に出るならスタメンでしかない。牧原さんに勝たないと1軍には居られないんです」。役割を理解しているからこそ、危機感を募らせる。

「守備、走塁では勝つことは難しいので。バッティングで、ホームランを打って牧原さんと差別化できれば、と考えています」。巨大戦力を抱え、入れ替わりも激しい。チャンスが多くあるわけではないこともわかっている。1軍を経験し、手応えも課題もはっきりとした。二塁の1番を目指し、勝負の2年目に臨む。

(川村虎大 / Kodai Kawamura)