戦力外後は取材NGも…突撃訪問に対応「いいですよ」 雨中の福岡大で見つけた仲田慶介

写真撮影に応じてくれた仲田慶介(右)と井上朋也【写真:飯田航平】
写真撮影に応じてくれた仲田慶介(右)と井上朋也【写真:飯田航平】

2度の“取材お断り”も…突撃訪問に笑顔「練習後だったらゆっくりいいですよ」

“一縷の望み”をかけて足を運んだ福岡大のグラウンド。遠目からでも「待ち人」であることはすぐにわかった。昨年11月にホークスから戦力外通告を受け、西武と育成契約を結んだ仲田慶介内野手。会えるかどうかも分からない中で、寄せられた“情報提供”だけが頼りだった。

「あの子はどこかで必ず練習しとるよ。福大とかに行ってみたらいいっちゃない?」

 そう助言をくれたのは、仲田が幼いころから住んでいたマンションの管理業務に携わっていた筆者の母だった。「朝、マンションの外に出ると、いつもエントランス近くの芝がはげていて、『また仲田くんが素振りしてたんやろう』と思いよったっちゃんね」。証言してくれたそのストイックぶりは、まさにイメージ通りの姿だった。

 仲田の母校・福岡大を訪れた日は激しい雨も降り、急に冷え込んだ。それでも、一緒に練習していた井上朋也内野手とノックを受け、バットをひたすら振り込む姿がそこにはあった。戦力外通告を受けた後、鷹フルとして2度取材を申し込んだが、いずれも断られていた。急な訪問にどのような反応をされるか不安だったが、仲田はいつもの笑顔で挨拶を交わしてくれた。「練習後だったらゆっくりいいですよ」。個室で快く取材に応じてくれた。

 そこで聞いたのが「ホークスの育成でやるっていうのは、もう正直選択肢として最初からなかった」というショッキングな言葉だった。ともすれば冷たくも感じるが、その口調からは並々ならぬ決意があふれ出ていた。取材を断っていたのは、行く先がまだ決まっていない中だったからなのだろう。それが仲田慶介という男だということを改めて感じた。

「もう育成でも(オファーが)来たらどこでも絶対行こうと思っていたし、来なかったら社会人野球も考えていましたね。それくらい入団したときから人生を懸けてやっていたので。それで今年(支配下に)上がって、もう1回育成っていうのはちょっと……。自分の中では野球を中途半端な気持ちでは絶対にやりたくないので、それだったら別の場所でやろうと決めていました」。西武から連絡を受けていたことと、移籍する理由を包み隠すことなく明かしてくれた。

 ともにホークスの厳しい競争下で戦ってきた井上は、「野球の話もそうですし、プライベートでもいろんなことを話せる仲でしたし。寂しいですけど、また1軍のグラウンドで一緒にプレーできたらなと思います」と、言葉少なに話した。年齢も入団した年も違う2人だが、野球が上手くなりたい気持ちは同じ。それは仲田が移籍することになっても変わらない。

 2人は1月の自主トレも一緒に行う。「ホークスの3年間で一番学んだことは、練習のやりすぎ注意ってことだったので」というほど、汗を流してきた25歳。井上もその姿から学ぶものがきっとあるはずだ。離れていても意識し合いながら、お互いを高めていける――。そんな関係であり続けて欲しい。力強く肩を組み、写真撮影に応じてくれた2人の笑顔は、お互いに向けた“エール”だったに違いない。

(飯田航平 / Kohei Iida)

当日応じてくれた仲田慶介選手の独占インタビューはこちらから