16年目のベテランが「絶対ないようにしています」…示した強い自覚
皆さま、あけましておめでとうございます! 鷹フルがお届けする今宮健太内野手の新春特別インタビュー第3弾です。強い危機感を抱きながらも、確かな成長を感じる1年になった2024年。自分を褒める出来事がありました。さらなる進化を目指して戦う2025年に向け、ありのままの思いを語ってくれました。
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2024年に遊撃手のベストナインに輝いた16年目のベテランであっても、「余裕がない」と自らの立ち位置に危機感を抱いて過ごしている。長年レギュラーとしてチームをけん引してきた今宮が改めて口にするのは、プロの世界の厳しさだ。
「毎年、シーズンが終わって『また翌年がある』っていうのは、実際のところない。ここ2、3年前から、ずっと思っていないです。1年が終わるごとに(また1から)っていう形で。シーズンが終われば、また2月からアピール合戦が始まるということを、しっかり考えているので。この世界に安泰はないです。やっぱり結果を出し続けないといけない世界なので。常にそういう気持ちではいます」
もちろん今年も強い決意で臨む。「1年1年が大事。大事というか、勝負の年。別に余裕もないですし、若い選手がたくさんいる中で負けないようにやろうと思っています」。そんな33歳は、昨年12月に行われたトークショーで今年の抱負を漢字にしたためた。色紙に記したのは「咲」という1文字だった。実は、2年前に行われたトークショーでも、同じく「咲」という字を書いていた。2年連続で選んだ真意とは――。
「咲いてないので、やっぱり。蕾にはなったのかなっていうのは正直ありますけど」。そう口にした今宮の表情からは、わずかな満足感すら感じられない。「蕾、開いていないですね。開くような成績は出していないので。でも、もう自分のやるべきことというか、やらなきゃいけないことは、この1年で特に分かってきた。そこは小久保(裕紀)監督の下、特に意識してやってきたので。引き続き、もう一花。もう一発、蕾を咲かせたいですね」。今宮にとって“蕾が開く”とは、どんなことなのか。
「それこそ、“津森の一件”とかありましたけど。ああいう形でチームを鼓舞したり、士気を高めたりしていけるような振る舞いができないといけないなと思ったので。それが1つ。ああいう形でしたけど、それができたっていうのは、自分で自分を褒めるのは嫌ですけど、よかったのかなと思います。だから、ここからはそういうところが一番(大事)。この年齢になってきて、技術は正直もう伸び代もそんなにないので。そういうところは意識したらできることですし、やりたいなと思っています」
2024年の試合中、マウンドで打者と戦えていなかった津森宥紀投手に喝を入れた出来事は、今宮にとっても大きなことだった。ベテランとなった今、自らが果たすべき役割に改めて気付かされたシーンでもあった。
2009年ドラフト1位で入団し、若い頃から1軍の世界で揉まれてきた。先輩たちに引っ張ってもらう時代から、引っ張る側へと変わってきた。現チームの野手では上から3番目。年上の選手では中村晃内野手と柳田悠岐外野手がいるが、今宮が彼らに喝を入れられるようなことはない。むしろ、「絶対ないようにしています」と意識している。「自分含めて晃さん、ギータさんが模範となって。お手本となってやっていかないといけないと思っています」と頼もしい。
2年前のトークショーでは、共演した球団OBの松田宣浩さんに叱咤された。自身の現役生活について「もう長くない」「何歳までできるかわからない」と発言するなど、弱気ともとれる姿勢を目にした先輩からの“愛ある喝”だった。熱い言葉は今宮の心にもしっかりと刺さっていた。今では弱気どころか、自らの成長意欲も、チームを引っ張る責任感も強くなった。
「ある程度、後輩に言ってきたりはしていましたけど、引き続きですね。当たり前のことを当たり前にやるっていう、一番難しいことなんですけど。見られていると思って、しっかりやっていきたいなと思います」と凡事徹底を心がけて臨む。
「でも、長くはないので。本当にもう、1年1年が勝負で。あと8年、10年やりますなんて、正直そんなことは思っていないので。1年ずつ、若い選手がどんどんショートというポジションを狙って来ると思うので、松田元選手のように跳ねのけていけたらいいなと思います」、覚悟を覗かせながらも、今季を楽しみにしているようにも感じられた。まだまだ進化を遂げていく“今宮健太”の16年目が非常に楽しみだ。
(上杉あずさ / Azusa Uesugi)