新天地が決まったからこそ、ようやく明かせるホークスファンへの感謝、そしてFA移籍の真相――。ロッテにFA移籍した石川柊太投手が鷹フルの単独取材に応じた。右腕が振り返ったのは、11年間過ごした福岡の思い出だった。
「決断するまではなかなか話せない部分もありました。もどかしさもあった中で、ホークスファンに向けては本当に感謝を伝えたいですし、『これからもよろしくお願いします』と。そういう気持ちです」
2013年育成ドラフト1位で入団した右腕。3年目の2016年7月に支配下登録を勝ち取ると、翌年にはプロ初先発で初勝利を挙げるなど、シーズン8勝をマークした。その後も着実に実力を伸ばし、2020年には最多勝、最高勝率のタイトルを獲得。2023年にはノーヒットノーランを達成するなど、投手陣の主力としてチームをけん引した。そんな石川が口にしたのは、厳しくも暖かかったホークスファンへの思いだった。
「やっぱりホークスは世界一の球団になるという目標がありますし、ファンもそういう目で見てくれている。厳しく見えるようで、愛があるというか。甘えられない環境が自分を成長させてくれましたし、ファンがそういう環境を作ってくれた。結果が出た時にはすごく喜んでくれて、ダメな時は『何をやってるんだ』と言ってくれる。それって大事なことじゃないですか。そんな中で自分というものを1本作らせてもらいましたし、そういう環境はすごくありがたかったですね」
時には厳しいバッシングを受けることもあった。それでも、たどり着いたのはファンのために野球をやることだった。「結果の良し悪しに一喜一憂しても仕方がない。応援してくれる人を笑顔にしたいというところに目標が落ち着いた感じです」。数年前にそう語った石川は、ぶれることなく腕を振り続けた。
だからこそ、FA権の行使を表明してから決断を下すまでの約1か月は様々な思いが胸をよぎった。「合理的に考えたところもあれば、もちろん感情の部分もありました。2つを混ぜ合わせた結果、自分の中でいいんじゃないかなっていう選択をしたつもりなので。『やっぱりこうだったかな、ああだったかな』って思うことはあるかもしれないですけど、それだけ迷わせてもらったっていうのは幸せなことじゃないかなと思います」。
来季からは同一リーグのライバルチームに移る。それでも、ホークスへの思いは変わらない。「一ファンとしては、強いチームでいてほしい。選手としては大変だし、ちょっと困るんですけど。ただ、強いホークスは続いていくと思いますし、そこに立ち向かっていくっていうのも大事だと思っています」。続けて口にしたのは福岡への愛着だった。
「11年目にして、ようやく色んな道を覚えてきたんです。カーナビを入力しなくても、ある程度いける場所が増えてきたタイミングでした。あんまり表現が上手くないタイプなんですけど、周りの人が思っている以上に福岡が好きですよ。ホークスも好きだし……。自分の中では『あまり伝わっていないのかな』みたいな部分はありましたけど、それは伝えたいなと思います」
最後にファンへのメッセージをお願いすると、快諾してくれた。「本当に、たくさんの応援をありがとうございました。リーグ優勝に日本一と、なかなかない経験をさせてもらった11年間でした。温かく、熱い声援があったからこそ成長できましたし、(みずほ)PayPayドームでヒーローインタビューを受けて、場内を回る光景というのは今でも忘れられません。選手としては敵になりますけど、そこは正々堂々と戦わせてもらいます、ただ、ホークスの選手だったことは変わらないですし、『ホークス魂』は消えてなくならないので。引き続き、温かい目で見守ってもらえればうれしいです」。
育成から這い上がり、ホークスのために右腕を振り続けた32歳。11年間で培った“魂”を胸に、新天地でも変わらない姿を見せる。