ソフトバンクから戦力外通告を受けた仲田慶介内野手が24日、西武と育成選手契約を結んだことが発表されました。新天地が決まり、鷹フルの単独インタビューに応じた25歳。語ったのは、戦力外を伝えられた後に報道陣の前で流した涙の“本当の理由”。「悔しさはもう通り越していました」と口にした真意に迫ります。
2021年育成ドラフト14位で入団した25歳が新たな道に踏み出す。福岡で生まれ育ち、福岡大大濠高、福岡大を経て、ホークス入り。憧れのチームから戦力外通告を受けたときは、大粒の涙を流しながら「本当に今までで一番と言っていいくらい悔しい」とこぼした。新天地が決まった今、涙の真意を語った。
「悔しさはもう通り越していました。まず(レギュラーシーズンの)最終戦が僕の中では一番悔しくて。9月に優勝が決まって、もう1回1軍でやりたいってずっと思っていて。2軍では打率も4割を超えていて。もう上がれるだろう、いつ上がれるんだろうとずっと思っていました」
開幕を1軍で迎えた今季は24試合に出場し、14打数3安打で打率.214の成績だった。主に守備固めや代走での出場。4月29日には代打で初安打も記録した。7月11日に出場選手登録を抹消されて以降は腰の故障もあり、リハビリ組で過ごすこともあった。それでも復帰してからは、2軍戦に24試合に出場して77打数31安打、打率.403の成績を残した。
これだけの成績を残せたのは、もう一度本拠地のグラウンドでプレーしたいという気持ちがあったからこそだった。奮い立たせた思いは、仲田の存在を無視することができないほどの結果に繋がった。待ちに待った1軍再昇格は10月4日のシーズン最終戦だったが、出場機会には恵まれることはなかった。
「その準備も本当にやっていました。1打席でもチャンスがあれば、絶対に結果を残せるってくらいの自信があったので。その中で出られずに終わって。その悔しさプラス、また育成って言われて……。ちょっと言葉が出なかったですね」。2軍で残した成績では、信頼にはつながらなかったのか――。悔しさは何倍にもなって仲田を苦しめた。
「最後に上がったけど、僕だけ試合に出られなかったんですよ。それもあってからの、また来年育成からって言われて。もうどん底に突き落とされるみたいな、そのくらいの感覚でした。今までは最後にいいことが待っているみたいな感じだったんですけど、最後の最後まで……」
目標でもあり、自身の支えでもあった1軍の舞台。チャンスはすぐ目の前にあったが、あえなくシーズンの終わりを迎えた。最終戦に再昇格したことの意味を考えると、”試合に出られるかもしれない”という期待が大きくなっていた。それだけに出場できずに終わったことが、仲田の中では想像以上にショックを与えていた。
クライマックスシリーズ(CS)ファイナルステージではベンチに入ることさえ叶わず、その期間はみやざきフェニックス・リーグの試合に出場し続けた。日本シリーズではベンチ入りメンバーがシーズン中の26人枠から40人枠へと大幅に拡大されるも、仲田の名前はそこにはなかった。
幼い頃から憧れたホークスのユニホーム。大学生になってもそれは変わることなく、“プロに入るんだ”という夢を確認するために足繁く観戦に訪れた。その念願がようやく叶ったシーズンは、最後に“諦め”の覚悟をもたらした。「他球団の育成でも全然よかったです。どこの球団でもいいという思いです」。
「ショックではありますけど、自分の技術を磨き続けていれば、絶対どこかで報われると思うので。明日以降もしっかりと変わらずに練習に取り組みたいと思います」
戦力外通告を受けた11月4日。声を震わせながらこう話していた。仲田に話を聞いた日の福岡は、急激に冬の訪れを感じる気候へと変わり、時折激しい雨を降らせた。そんな中でも、「うしっ!」と歯切れの良い声を出してバットを振り込んでいた。「西武で首位打者を獲ってやりますよ!」。そう笑顔で語る仲田の目に曇りはなかった。