DeNAと育成契約…ホークスでの10年間は「短く感じた」
DeNAは16日、ソフトバンクを戦力外となった笠谷俊介投手と育成契約を結んだことを発表しました。ホークスで10年間を過ごした左腕は、鷹フルの単独インタビューに応じていました。明かしたのは、和田毅投手への感謝。笑いなしでは語れない印象的な“初対面”。今も大切にしているのは、プロ初勝利を挙げた際にもらったプレゼントでした。
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ファンの皆さん、来季から横浜でお世話になります。背番号は199番。よろしくお願いします。戦力外になってから少し時間が経ちましたが、自分の中でも毎年覚悟していたことなので、そこまで驚きはなかったです。この球団で結果を残せなかったし、10年は本当に短い時間に感じました。結果の世界なので仕方ないことなんですけど、そこは悔しかったです。
一番お世話になったのが、和田さんでした。僕にとっては師匠の存在で、思い入れのある先輩の1人です。怪我ばかりしていた時に、自主トレをお願いしたんですけど、本当に快く「いいよ」と言っていただきました。あれがなかったら今の自分はいないです。(戦力外の)電話があって、すぐに連絡したのも和田さんでした。家族よりも早く伝えましたし、「またどこかで会えたらいいね」という話は、そこでさせてもらいましたね。
思い出に残っているのは、やはり自主トレをお願いさせてもらった時です。和田さんのロッカーにまで行って「自主トレをさせてください」と。1軍登板もできていませんでしたし、とにかく「自分を変えたい」という思いから、和田さんのところに行きました。最初は「え、野手じゃないの?」って、牧原(大成)さんに間違えられたんですけど(笑)。それまでの関わりはなかったので、すごく緊張したのは覚えています。
今は長崎ですけど、初めての自主トレは筑後。どれも厳しいものばかりでした。走るのも食べるのもキツいんですけど、最初は和田さんを見て、ついていく。そんな日々でした。怒られたことなんて1回もないです。4年間、ご一緒させていただいて、たくさんのことを学びました。選手としてはもちろんなんですけど、人として尊敬できます。多くの人が周りにいる理由とか、技術的にすごいところも、近くで見たからこそ理解できるところがありました。
プロ初勝利は2020年7月17日のオリックス戦(京セラドーム)でした。やっと勝てたなと思いましたし、「おめでとう」と和田さんはお祝いに赤ワインをプレゼントしてくれました。嬉しくない人はいないってくらい、本当に嬉しかったです。でも、まだ開けて飲めていないんですよね……。今もワインセラーに入ったままです。コルクを抜かずに飲む方法も和田さんは教えてくれたんですけど、いつ飲もうかなとずっと思っているので、自分の大切な時に開けたいなと思います。
2021年のオフ、僕にとってもそろそろ和田さんから“卒業”しないといけないと思っていました。それを伝えると「俺もそう思う」と言ってくださって……。本当に、ただ一緒に自主トレをするのではなくて、もっとピッチングが良くなるために、もっと先のことも含めて、僕のことを考えていてくれていたんだなと思いましたし、その思いが伝わってきました。そこから(2022年以降)上手くいかない時期があっても、和田さんは変わらずに接してくれましたし。10年が経った今も、感謝しかありません。
現役引退されると聞いた時は、本当に驚きました。ちょうど戦力外になったと、僕から連絡をした後に個人的にLINEをいただいて、知りました。「今年で……」という短い言葉ではあったんですけど。引退会見にも、実はこっそりと行かせていだたきました。当然たくさんのカメラがありましたし、僕は後ろから見ていた。戦力外になって自分から電話した時もそうでしたけど、「まだまだ俊は諦めるな」と言っていただきました。
和田さんは僕にとって「お父さん」のような存在です。何か伝えるとしたらですか? 「ありがとうございます」というと、何だか終わってしまう気がするので「これからもよろしくお願いします」ですね。何度も何度も、心から感謝しています。ファンの皆さまも10年間、本当にありがとうございました。ユニホームは変わりますが、とにかく新天地で頑張ります。これからも、どうかよろしくお願いします。
(竹村岳 / Gaku Takemura)