廣瀬隆太の心中…「心の持ちようが難しい」 確かに響いた小久保監督の“メッセージ”

ソフトバンク・廣瀬隆太【写真:竹村岳】
ソフトバンク・廣瀬隆太【写真:竹村岳】

振り返る1年目のシーズン…「楽しかったです」

 1年目の終わりに最大級の刺激を与えられた。「楽しかったですね」。みやざきフェニックス・リーグで鍛錬している廣瀬隆太内野手は、シーズンを一言でまとめた。その表情は何かが吹っ切れたかのようだった。

 ルーキイヤーの今季、5月28日に1軍初昇格を果たすと、7月15日までの約1か月半を1軍で過ごした。初打席から初安打を記録するまで、16打席連続を要するなど、プロの洗礼もしっかりと浴びた。それでも試合で起用しつづけた首脳陣の応えるように、徐々に対応し、打率.233、2本塁打、9打点の成績で1年目のシーズンを終えた。

 将来は主軸に――。そんな期待がかかる23歳に、宮崎での視察を終えた小久保裕紀監督は、報道陣の前で廣瀬の名前を挙げて「1回落としたけど、その後の姿がちょっと物足りないなっていう」と、苦言ともエールとも受け取れるような発言をした。この言葉に対して、廣瀨自身はどのように受け止めたのだろうか。

「あの(小久保監督の言葉の)通りだと思います。2軍に落ちてからは、1軍に上がれると思ってやってきたんですけど、なかなかうまくいかないことが多かったので、そういうところかなと思います。そういうとこも勉強になりました」

 汗を拭いながら、しっかりと前を向いて廣瀬は語った。「2軍に戻ってくると、やっぱり難しいです。心の持ちようが……。一生懸命なのは当たり前ですけど、2軍でいつ上がれるかわからなくて、チャンスが自分にあるのかもわからない時にどれだけ頑張れるか。小久保さんは多分そこを言ったんじゃないかと思います」と受け止めていた。

 自身の気持ちを見透かされたかのような小久保監督の言葉だった。だからこそ、前向きに受け止めることができる。「目の前に餌があったらだれでも頑張るんですけど、目の前に餌がない時でもどれだけ頑張れるかってとこだと思います」。そう気付かされる出来事だった。

「バッティングでひとつ考えていることはあります。近藤さんがよく練習でやっていることを試してみたいなと思ってるんですよね。すごく興味があります」。新たに取り組みたいことも見つかった。今季、正木智也外野手も取り入れた近藤健介外野手の打撃練習。CS前、フェニックス・リーグに参加していた正木に打ち方を習う姿もあった。

ソフトバンク・廣瀬隆太(左)と正木智也【写真:飯田航平】
ソフトバンク・廣瀬隆太(左)と正木智也【写真:飯田航平】

 小久保監督の言葉は1年目の終盤に大きな刺激を与えた。そこも含めて「今は本当に自分の技術だけに集中してできているから、楽しいですよ」と笑顔を見せる。

「僕結構自己中なので、プロって自分のことだけ考えていればいいじゃないですか。それはすごく楽しかったです。自分に合ってるなって感じがしました。アマチュア時代はキャプテンだったし、色々周りを見てからやらないといけなかったし、今思えばあんまり野球に集中できていなかったかもしれないです」

 図太さが廣瀬の持ち味。小久保監督のメッセージは確かに響いている。将来主軸として活躍するためにも、“今は”まだ自分のことだけに集中して技術を高めて行く時だろう。しかし、大きな期待を背負っていることは間違いない。小久保監督もかつては廣瀬と同じ二塁を守る長距離打者だったのだから。

(飯田航平 / Kohei Iida)