周東佑京が語る家族…激変した価値観 大切な妻の存在、今はもう「僕1人の責任ではない」

天を見上げるソフトバンク周東佑京【写真:竹村岳】
天を見上げるソフトバンク周東佑京【写真:竹村岳】

左膝の違和感で離脱…CSへ「できる限りのことをやりたい」

「今は……壊れたくはないですね」。選手会長の言葉はずしりと重かった。これまでは故障を抱えていても、多少の無理を覚悟の上でプレーし続けてきた。弱気になったわけでも、二の足を踏んでいるわけでもない。もう、自分だけの体じゃない——。家族の大切さ、そして命の尊さをより深く考えるようになったからだ。

 16日から始まるクライマックス・シリーズ(CS)ファイナルステージ。日本シリーズへの出場権をかけた大一番に向け、黙々と準備を進めているのが周東佑京内野手だ。シーズン最終盤に左膝の違和感で戦線を離脱。今季41盗塁で2年連続3度目のタイトルを獲得したスピードスターをオーダー表に書き入れることができるかどうか。首脳陣にとって頭を悩ませる問題となっている。

 過去にもシーズン終盤に体の痛みを抱えたことは何度かある。それでも、試合に出る決断を下してきた。「あと数試合が終わればオフなので。壊れても構わないと思っています」。一見クールな印象を持たれがちだが、誰よりも熱い心を持つ男だ。今回もその覚悟でいるのか——。周東の答えは明快だった。

「壊れたくはないです。まだまだこれから先も野球を続けたいし、壊れることはないように、できる限りのことをやりたいです」

 プロ野球選手である限り、体のどこにも痛みがなくプレーできることはほぼない。ギリギリの線を見極めながら、日々の戦いに臨んでいる。それは周東も例外ではない。変わったのは、「人生観」だった。

4月に再合流したソフトバンク・周東佑京【写真:荒川祐史】
4月に再合流したソフトバンク・周東佑京【写真:荒川祐史】

「僕1人だったら、壊れても別に『僕の人生だし』とは思いますけど。やっぱり家族がいる中で、僕1人の責任ではどうしてもそれ(壊れてもいいという選択)はできない。僕が怪我をして『ダメでした』ってなって、誰が悲しむのか。やっぱり妻は『私が夫を助けられなかった』って感じちゃうと思うので。そこだけは避けたいですよね」

 2020年に結婚し、2022年6月には長男が誕生した。それまでは身一つでブレーキをかけることなく突き進んできた周東にとって、何物にも代えがたい存在だ。「子どもも生まれてですかね。妻と2人だったら、『2人で違うところに行って何かやろうか』とかなりますけど、子どもにも野球をやっている姿をもっと見せたいので。そこは変わったのかなと思いますね」。

 今年の4月中旬には身内の不幸を理由に、チームから一時離脱した。新たな命との出会い、そして別れ——。周東の心の中で、より強まった思いがある。「家族が一番だなと。それは凄く感じるようになりましたね」。

 もう、自分だけの体じゃない。それでも選手会長として、何より一野球人として求められることは分かっている。「走る部分で(不安が)ゼロっていうのは厳しいと思いますけど、ほぼ痛みなく走れてはいるので。あとは怖さが消えればっていう感じです」と正直に現状を口にしつつ、「やれることをやる。そこは変わらないです」と力強く言い切った。家族のため、チームのため、そしてファンのため。周東は“責任”と真正面から向き合う。

(長濱幸治 / Kouji Nagahama)