5回に放った3点二塁打を小久保裕紀監督も評価「大きかったですね」
ソフトバンクは14日、オリックス戦(京セラドーム)に10-1で勝利した。小久保裕紀監督が試合の流れを踏まえて「本当に大きかった」と語ったのが、主導権をガッチリと引き寄せた栗原陵矢内野手の一打だった。そんな栗原は試合前に京セラドームへ姿を見せると、すぐにオリックスの中嶋聡監督の元へ行き、言葉を交わしていた。
先発は、この試合で今季11勝目を手にしたリバン・モイネロ投手だった。3回を終えた時点で両チーム無得点。4回に山川穂高内野手の適時打で先制点を奪い、追加点が欲しい5回だった。無死一、三塁から牧原大成内野手は空振り三振。緒方理貢外野手が遊飛に倒れ、チャンスが潰えようとしていた中、2死満塁で打席に立ったのは栗原。右中間を破る走者一掃の3点二塁打を放ち、一気に流れを手繰り寄せた。
小久保監督は「あのままノーアウト一、三塁から(得点が)入ってないと、(ロベルト)オスナ(投手)を投げさせるような展開にはならなかったので。そういう意味ではゲームを決める一打として、2アウト満塁からの一打は本当に大きかったですね」と評価した。栗原自身は「普通です」と足元を見つめ、主力として勝利に貢献しても表情が変わることはなかった。
そんな展開の中で勝利した一戦だったが、試合前に栗原と中嶋監督はどんな会話をしていたのか。
「いつも通りの挨拶と、ああいうことがあったので。ちょっと話をしに行きました。僕も何かできることがあったと思いましたし、抹消になってしまっているので。詫びるとかじゃないですけど、すいませんでしたって伝えました」
栗原が「ああいうこと」と振り返ったのは、13日の試合中の出来事だ。8回1死満塁で近藤健介外野手が右前打を放つと、二走だった栗原も本塁を狙った。クロスプレーの結果、捕手の若月健矢捕手と激しく交錯。そのまま若月は交代となり、翌14日に登録抹消となった。大阪市内の病院を受診し、脳震とうの診断を受けたとオリックスからも発表された。貴重な追加点を奪おうとする全力のプレーだったとはいえ、相手選手が登録抹消となった。だからこそ「すみませんでした」と頭を下げに行き、これに対して敵将も穏やかな表情で応えていた。
クロスプレーがあった時、栗原も確かに表情を歪めていた。痛くないはずがないが、それでも「出ている以上は関係ないです」と言い切る。奈良原浩ヘッドコーチも「本人が大丈夫っていうことだったから。多少は痛いだろうけど、そこまでのダメージじゃなかったから」と語った。チームは現在、127試合を消化しており、そのうち124試合に栗原は出場している。一瞬でも長く、グラウンドに立っていたい思いはだれよりも強い。
後半戦が始まる前の7月下旬、小久保監督も「基本的にはサード1本、栗原で行こうということを決めてやっているので、しっかりチームの軸として、中心選手として最後までゴールしてほしいですね」と語っていた。栗原本人も「それはもう1年間ずっとそうですし、その中で出れていない試合もあったので。そういうところが、まだまだレギュラーになりきれていないところかなと思いますね」と言う。確固たる自分だけのポジションに向けて、思いが褪せることは絶対にない。
栗原は今季、二塁打を量産。すでに38本に達し、1948年の笠原和夫氏がマークした球団記録の40本まであと2本としている。「あまり意識はしてないですね。もう本当に目の前の試合を勝つことだけです」。クロスプレーにおいて、痛みがあるかと問われても「いや、大丈夫です」と前を向く。目標は、4年ぶりのリーグ優勝だけ。2024年、確かなレギュラーの座をがっちりと掴んでいる栗原は、絶対にグラウンドを離れない。
(飯田航平 / Kohei Iida)