山川穂高が分析…飛ばないボールの“秘密” 「みんなが言うほどでは…」見据えた別の可能性

日本ハム戦で本塁打を放ったソフトバンク・山川穂高【写真:荒川祐史】
日本ハム戦で本塁打を放ったソフトバンク・山川穂高【写真:荒川祐史】

86キロの“超スローカーブ”を技あり弾…「消すと絶対に打てない球なので」

 自らの存在価値をバットで示し続けてきた男が、1つの節目に到達した。「やっぱり最低ラインですよね。どんなに悪くても、その数字は打ちたかったので」。アーチストとしての意地を口にしたのは山川穂高内野手だった。

 4日の日本ハム戦(みずほPayPayドーム)。3回無死で山崎の“超スローカーブ”を捉えた山川の打球が左翼テラス席に飛び込んだ。86キロのボールに体が前に行かないよう、必死にこらえてからのフルスイング。技ありのアーチで両リーグ最速の30号一番乗りとなった。「やっぱり(山崎)福也にはあれがあるので。(可能性を)消すと絶対に打てない球ですし、頭には入れますよね」。まさに、してやったりの一発だった。

 パ・リーグでは本塁打ランキング2位に11本差をつける独走ぶり。セ・リーグトップのヤクルト村上でも23本と、山川の数字がいかに抜きんでているかがわかる。「打低」ぶりが際立つ今シーズン。ボールが飛ばなくなったとの声も上がる中、山川は口にしたのは長距離打者ならではの感覚だった。

「やっぱり飛ばないのは飛ばないので。それはもう、他のチームの選手も言っていますし。その通りだと思います」。さらりと言い切った上で、続けて口にしたのはアーチストとしての“プライド”だった。

「じゃあ、どれぐらい飛ばないのかっていう話なんですよ。10メートルくらい(飛距離が)変わるのかっていったら、そうではなくて。感覚的には3、4メートル。僕が完璧に捉えて(スタンドの)上段までいってた打球が中段になるとか。中段までいってたやつが普通のスタンドインになるとか。そんな感じの差はあります。ただ、僕の場合はちゃんと(ボールを)捕まえられれば、別に今のボールだろうがなんだろうが、ホームランにできると思っているので」

日本ハム戦で山崎の“超スローカーブ”を捉えるソフトバンク・山川穂高【写真:荒川祐史】
日本ハム戦で山崎の“超スローカーブ”を捉えるソフトバンク・山川穂高【写真:荒川祐史】

 両リーグともに3割を超える打率を残している選手は1人のみ。チーム防御率が2点台をマークしているのはセ・リーグで4球団、パ・リーグも3球団と「投高打低」が際立っている。山川はボールの影響について、「打球速度に関わるので。(打球が)上に行かなくても、下に行く打球速度もそう。やっぱり打球が遅くなると野手に捕られちゃうので。打率が上がらないっていうのはあると思う」と分析。その一方で、別の可能性にも触れた。

「どれぐらい影響するかって言ったら、そんなに大きくは影響してない気もします。過去に比べると確実に飛ばないのは飛ばないけど、みんなが言ってるほどではない。ピッチャーです。もう圧倒的にピッチャーの質が上がりまくっているので。負けているときに投げてくる人がものすごく球が速かったりとか。そういうのは過去5、6年前とかにはなかったので」

 投手のレベルが飛躍的に上がった中で、長距離打者の証ともいえる30本塁打に到達した山川。その視線はさらなる高みを見据えている。「優勝することと、タイトルを獲ることは絶対にセットというか。やっぱ全部獲りたいじゃないですか。自分が思い描いたものをしっかり取り切るっていうことが大事だと思うので」

「二兎を追う」どん欲さこそが、これまで3度の本塁打王に輝いた“最大の武器”とも言える。「ここからはまた1本1本の積み重ね。そういう感じでいいんじゃないかと思いますね」。4年ぶりのリーグ優勝をつかみ取るため、4番としての圧倒的な存在感を示し続ける。

(長濱幸治 / Kouji Nagahama)