プロに入っても「ギータや」 不変の憧れ…仲田慶介が目の当たりにしたスターのプロ意識

ソフトバンク・柳田悠岐(左)と仲田慶介【写真:飯田航平】
ソフトバンク・柳田悠岐(左)と仲田慶介【写真:飯田航平】

「そこまで考えて徹底してやっているんだな、僕ももっとやらないといけないな」

 悔しい離脱のリハビリ期間が“スーパースター”との距離を詰める機会になった。7月11日に出場選手登録を抹消され、現在はファームで調整中の仲田慶介内野手が「まだ憧れの目で見ちゃうんです」と告白する相手とは柳田悠岐外野手だ。福岡市出身で根っからのホークスファンだった25歳にとって、リハビリ組で汗を流す柳田と共に汗を流した時間は貴重な時間になった。

 4年ぶりのリーグ制覇を目指して戦っていたチームに激震が走ったのは、5月31日の広島戦(みずほPayPayドーム)。3回の第2打席で柳田は右太もも裏を負傷した。二ゴロを放ってダッシュした際に痛め、一塁へ倒れ込むようにヘッドスライディング。肩を借りながらベンチ裏に引き上げていく主砲の姿に、球場は騒然となった。

 この時の風景を、ベンチにいた仲田もハッキリ覚えている。「『うわぁ……』って感じです。僕がどうこう言えるあれじゃないですし……」。言葉にするのも難しいほどの衝撃を受けた。その後、柳田は「右半腱様筋損傷」で全治およそ4か月と診断された。仲田も抹消後に右腰などを痛めてリハビリ組へ。同じ時期に、柳田と筑後で一緒に練習する時間が増えた。

「いや、すごいです。雰囲気とか、やっぱりスーパースターです。いまだに『ギータやん!』みたいな感覚がありますね、『柳田さん』というより。子どものような気持ち。普段は柳田さんって呼びますけど、内心は『ギータすげえ』みたいな。みんなギーさんって呼ぶんですけど、まだちょっと……」。まだ遠慮がちなのは子どもの頃からのスーパースターだからこそ。柳田からは「ジョージとか、普通に仲田とか」と呼ばれ、親しく接してもらっている。

 プロ意識の高さも目の当たりにした。「リハビリ中もすごく明るくて、トレーニングとかやれること、食事もすごく気にされていました。あれくらいの選手でもそうされるんだって。食事とかは特に気をつけられていたと感じたので。『絶対に脂肪はつけない方がパフォーマンスが上がる』とか、めちゃくちゃ気をつけていました。揚げ物とか絶対に食べないですし、夜は炭水化物を食べない。魚を食べたりとか、そこまで考えて徹底してやっているんだなって。僕ももっとやらないといけないなって思いました」。

 距離感はより近くなった。「リハビリ期間に良くしてもらって、ご飯にも連れて行ってもらいました」。1軍にいる間も食事を共にしたことはあったが、リハビリ中に会話も増え、より関係性は深まった。仲田がリハビリ組を“卒業”する際には、柳田の担当トレーナーと3人で焼肉を食べに出かけた。「筑後で普通にトレーニングしていたら、飯行こうって」と誘ってもらったという。

 店に着くと、目の前に座る柳田をマジマジと見つめて、改めて実感した。「(体つきが)えぐいっす。ちょっとピチッとしたもの着られていたんですけど、すごく威圧感がありました。エグいな、体デカいなって思いましたね。僕はいまだに子ども心があるというか、そういう目で見ちゃいますね」と、目を輝かせながら、その時のことを思い返した。

 幼い頃からホークスのファンだった。「『ギータタオル』とか持って試合を見に行っていたので、いまだに内心は『うわ、ギータや』『ギータ目の前おる』みたいな気持ちがあります。ダメなことなんですけど、それくらい自分の中ではスーパースターすぎて」。そう語る姿はまるで“野球少年”。プロ野球選手になっても子どもの頃の気持ちを忘れていないのは、ひたむきな仲田のプレースタイルにも通じている。

 約1か月のリハビリ生活は、悔しくもどかしい時間だった。その一方で、柳田と深く交流して刺激を受けると同時に、初心を思い出す時間にもなった。順調にいけば、9月5日に行われるウエスタン・リーグのオリックス戦(タマスタ筑後)から2軍に合流する予定。柳田から学んだプロ意識と刺激で、仲田はここからさらなる飛躍を見せてくれるはずだ。

(上杉あずさ / Azusa Uesugi)