いまだ1軍昇格なしも「外野をやりたいとも思わない」 捕手専念のシーズン…谷川原健太の胸中

ソフトバンク・谷川原健太(左)と柳田悠岐【写真:竹村岳】
ソフトバンク・谷川原健太(左)と柳田悠岐【写真:竹村岳】

「ずっと動くじゃないですか、キャッチャーって。なので、すごく楽しいです」

「ギータさんと1軍でやれるように頑張ります」

 これが1つの大きなモチベーションになっている。“捕手専念”となった今季、ここまで2軍でのプレーが続く谷川原健太捕手は、ブレることなく日々を送っている。

「1日、1日無駄はないと思ってるんで」。ここまで59試合に出場し、打率.298。2軍捕手陣の中で最も多くマスクを被り、打席にも立っている。現在9試合連続安打中と好調だが、谷川原自身は「マジですか! へ!?」と気付いていなかった模様。「上がってきていると思います」と、確かに状態が上向いている手応えもあるが、目先の成績にとらわれないようにしている。

 打撃面は全体練習以外の時間で、トレーニング用のバレルバットと呼ばれるバットを振り込んでいるのが好調の要因の1つ。ヒットや長打に繋がる確率の高い打球角度(バレルゾーン)に乗せやすいスイングを身につけるための練習で、アーロン・ジャッジ外野手(ヤンキース)などのメジャーリーガーが取り組むことでも知られている。このバレルスイングが自身に合っていると感じ、取り組みを継続させている。

 また、自身の体とも向き合っている。「人によって(有効に)使える部位が違うみたいで、(自分は)足の裏と膝でした。自分の打てそうな感覚とズレずに打てるというか」と頷く。捕手としては、“1軍予備軍”の若手投手ともバッテリーを組み「ピッチャーが投げやすいように、いいところを引き出せたらなって思ってやってます。やっぱいい球投げてほしいんで、最大限に生かせるように」という。投手のための献身的な姿も印象的だ。

 とはいえ、1軍は現状、捕手2人体制を敷いている。なかなか昇格のチャンスがない中で、谷川原は「まだ現状呼ばれていないっていうのはやっぱり実力不足ですし、戦力と思われていないと思うので、そこはしっかりアピールしていきたい。無駄な日はないので、自分のやることをやっていけばいいこともあります」と受け止める。

 昨季は1軍で61試合に出場した。捕手登録ながら外野の守備固めとしてもチームに貢献した“ユーティリティプレーヤー”だったが、今季は捕手だけにポジションを絞った。覚悟の上での決断だが、1軍出場はない。ただ、谷川原は決断に後悔はないと言う。

「全く。外野をやりたいとも思わないですし、外野をやっていたら1軍にいられたかなとかも思わないです。今は楽しくやっています」。捕手のやりがいを改めて感じられるシーズンを過ごし、充実感も感じている。「ずっと動くじゃないですか、キャッチャーって。なので、すごく楽しいです」。

 ファーム暮らしが続くが、最近は“師匠”の存在も刺激を与えてくれている。右太もも裏の負傷から復帰を目指してリハビリ中の柳田悠岐外野手だ。自主トレをともに行っていた2人の間柄。練習時間が重なることはなかなかないというが、時々、ウエートルームで顔を合わせるという。「相談とかはあまりしないですね。今、ロッカーが隣なんですけど、野球の話はあまり……。今日話したのは『今朝、真砂(勇介)と電話したんだけど』みたいな」と、たわいもない会話がほとんどだ。

 刺激にするのは柳田の姿勢と肉体だ。谷川原はこう明かす。「やっぱり頑張っているんで。トレーニングだったりですごく体がバキバキになっていたので。デカくなっているので、すごいな、やらないとなって、すごく(刺激)受けますね」と目を見開く。ウエートルームで身体を鍛える“師匠”は「やっていますね、ずっと。懸垂とかめちゃめちゃやっていたり、リハビリ系のメニューやっていたりします。さらにキレッキレですね。復帰したらとんでもないですよ」と唸るほどだ。

 超人の更なる進化を近くで見ているからこそ「ギータさんと1軍でやれるように頑張ります」と、気持ちも新たになる。捕手として1軍でプレーするために、谷川原は自らを信じて腕を磨き続ける。

(上杉あずさ / Azusa Uesugi)