溢れる野球への情熱が、体を痛める原因になった。“育成三銃士”と呼ばれ、緒方理貢外野手、川村友斗外野手と共に開幕前、支配下登録を勝ち取った仲田慶介内野手はいま、リハビリ組にいる。7月11日に出場選手登録を抹消されて2軍降格となった仲田は、なぜリハビリに時間を費やすことになったのだろうか。
オープン戦期間中に支配下昇格の切符を掴み、開幕1軍も勝ち取った。主に守備や代走として24試合に出場した一方で、打席数は限られ、14打数3安打。小久保裕紀監督から「2軍で試合に出てこい」と告げられ、実戦機会を重ねるためにも2軍落ちとなった。
1軍ではなかなか出場機会が訪れず、もどかしい思いも抱えていた。降格となったものの、大好きな野球をめいっぱいできると、イキイキとした姿で2軍戦に出場していた。ただ、7月半ばはオールスターブレークもあって、2軍戦の少ない時期。仲田は2試合に出場しただけで、21日には右腰の炎症などでリハビリ組に合流していた。
その経緯を仲田はこう明かす。
「シーズン中に試合に出ていないモヤモヤとかがあって、それでちょっと(トレーニングを)やりすぎた所があって反省しています。シーズン中は野球の(技術)練習も結構やるじゃないですか。それプラスで(トレーニングし過ぎて)制御出来なかった。体がちょっと張っていても、試合に出ていないから、モヤモヤした気持ちをトレーニングとかに持っていって、そこで気持ちが抑えれなかった。試合に出ていたら、多分もうちょっと抑えられていたと思うんですけど……」
日頃から豊富な練習量で知られている仲田。首脳陣からストップをかけられることもあるほどだ。「怪我しちゃったらそう言われるじゃないですか、周りから。でも、僕は(練習を)やってきたからここまで来られたと思っているから。やりすぎとかはあるかもしれないですけど…」。言葉に熱がこもる。今までだって日々、自分を追い込んできた。今の仲田を作り上げてきたのは、紛れもなく圧倒的な練習量だ。
仲田自身、自分の限界は知っているつもりだし、怪我をしないための取り組みも、練習量をこなすためのコンディション作りも十分にやってきていた。今回はトレーニング環境の変化や、試合に出られない鬱憤などが重なった。怪我は悔しいが、勉強にもなった。これを糧に、1か月のリハビリ生活を過ごしてきた。
実戦復帰は間近に迫っている。当初の予定よりも短期間で復帰へのステップを踏むことができた。「もう一度、やっぱり今シーズン中に、1軍でプレーしたい気持ちがあるので。予定よりはだいぶ早いです。でも、痛みはないので」。思いは1つだけ。今季中の1軍再昇格しかない。
1軍再昇格に向けて“秘密兵器”を見つけた。新たに筑後に導入されていた「トラジェクトアーク」というピッチングマシンだ。すでに導入されている「アイピッチ」のように回転数や回転軸を入力して実在する投手のボールを再現するだけでなく、映像も加わり、投手のフォームやリリース位置、球筋なども再現でき、「1億円ぐらいするらしいです」と仲田も目を丸くする最新鋭機器だ。
この「トラジェクトアーク」を仲田はフル活用している。「最近はもうずっとそれを打っています。リハビリの時には映像を見るだけ、とかもやっていました。目をしっかり慣れさせられる練習になるんですよ。毎日ピッチャーと対戦してるみたい」。実戦から遠ざかると、投手の“生きたボール”にアジャストするのに苦労するもの。このマシンのおかげで、不安なく実戦に戻れそうだ。
順調なら8月末の3軍戦で実戦に復帰し、9月上旬には2軍に合流する予定となっている。野球が出来なかったモヤモヤも、ケガをしてしまった悔しさも晴らす時が近づいている。