一流外野手に不可欠な“目切り”…井出コーチ「欲を言えば、です」
グラブ1個分、距離にすればわずか10センチが届かなかった。17日のロッテ戦(みずほPayPayドーム)。同点の8回、2死満塁でポランコの痛烈な打球は中堅を守る川村友斗外野手の背後を襲った。懸命に背走したが、無情にも打球は伸ばしたグラブをすり抜けた。
結果的にポランコの一打は走者一掃の3点二塁打となった。プレーが止まると川村は思わず唇をかんで天を仰いだ。「長打があるなというのは当然頭に入れていましたけど、ただただ悔しいです。僕が捕れていたら、もしかしたら試合に勝てていたかもしれないので……」。チームにとっては痛い決勝点となり、試合に敗れた。
一連のプレーに大きなミスはなかった。「あそこは精一杯のところなので」。井出竜也外野守備走塁兼作戦コーチも川村を責めることはなかったが、あえて“注文”を口にした。それは、より一つ上のプレーヤーになってほしいとの親心からだった。
「欲を言えば、(打球から)目を切ってボールを追えていたら面白いプレーになっていたかもしれない。本当の100%を出せていたら捕れていたかもしれないですね」
井出コーチが言及したのは、打球を追う姿勢だった。ボールを見ながらの背走はどうしてもスピードが落ちる。打球を見て捕球地点を予測し、目を切って最短距離で追えていたらキャッチできた可能性もあったと指摘する。もちろん、高いレベルのプレーには違いない。
試合後に川村が口にしたのも目切りについてだった。「いっぱいいっぱいだったんですけど、あとグラブ1個分で取れなかったので。目を切る時間だったりとか、ほんの少しでもどこかで(時間を)削れていれば取れたのかなと思ったので。1秒でも、1歩でも縮められていれば捕れていたのかなって」。
今シーズン開幕直前に支配下登録を勝ち取った3年目の川村が持つ伸びしろは無限大だ。将来を大きく期待するからこそ、井出コーチはこの日のプレーを「収穫」と口にする。「目きりは練習ではできていることだけど、いざ試合でできるかっていうところですよね。それが分かっただけでも意味はあるんじゃないですか」。
川村自身も一切言い訳することなく、「本当に悔しかった」と何度も繰り返した。走攻守そろった外野手として将来有望な25歳。あくなき向上心で成長し続け、今度こそ届かなかった10センチを埋めてみせる。
(長濱幸治 / Kouji Nagahama)