開幕前はこんな姿は想像出来なかった。オープン戦は1点も取られることのない抜群のパフォーマンスを見せ、順当に開幕ローテ入りを果たした。今季初登板となった4月3日のロッテ戦(みずほPayPay)で7回1失点。2戦目となった4月12日の西武戦(ベルーナドーム)も7回1失点と好投して今季初勝利を挙げた。幸先の良いスタートを切り、期待を抱かせた。
ところが、そこから徐々に投球内容は下降線を描いた。5月30日の巨人戦(東京ドーム)で5回5安打6失点。7月10日のオリックス戦(京セラドーム)では4安打2失点で2回降板となり、翌日に出場選手登録を抹消された。ここまで1軍で10試合に登板して3勝2敗、防御率3.12。そこから1か月以上、ファーム暮らしが続いている。
状態は徐々に上向いてきた。「登板を重ねるごとに、状態は上がってきていますし、課題はまだあるにしても、しっかりとステップは踏めていると思います」。17日の神戦では6回2安打無失点。「真っ直ぐ自体もよかったですし、粘られて球数が多くなってしまうところもあったんですけど、(今までは)そういったところを決めきれずに前に飛ばされたところはあったので、今日はそこで三振を取れましたし、フィニッシュのボールをずっと課題にしていたので、先に進めたところかなと思います」と手応えを口にした。
球数は80球で、7回も続投するつもりだったが、首脳陣からストップがかかった。前回登板で猛暑の中、足がつって降板していた。この日も試合途中にトレーナーがマウンドに駆けつける場面があった。「変にクセがついても困るんですけどね……。でも、全然問題ないです」と東浜。暑さの中での戦いにも「慣れないですけど、みんな一緒ですから、それを言っても仕方ないです。投げていく中で掴んでいくしかない。時間は待ってくれないですし、その中で、自分の中でどうしたら良くなるのかを考えながらやっています」と受け止めている。
自身の状況とは裏腹に、チームは着々と優勝へ近づいている。東浜の口からは「結果だけは見ています。映像とかを見ちゃうと悔しさも出てきちゃいますし、なかなか難しい感情になったりもする。でも、しっかりと戦況だけは見ています」と、素直な思いも溢れ出る。その場にいられないもどかしさや、複雑な感情が込み上げてくるのも確かだ。
待たれるのは1軍復帰だ。「そればかりは僕が決めることではない。僕は与えられた場所で1軍に戻るために精一杯、アピールするだけだと思っています。それはずっと持ち続けているので、次はどう、とかそういうのはないです。次の言われた登板で100%で投げることを考えてやっています」と東浜は語る。自身の状態を上げることだけを考えて、目の前のことにひたむきに取り組もうとしている。
筑後での日々も1か月以上が経った。共に汗を流す若手の姿から学ぶこともある。「いろんな人がいっぱいいるので、どういうことをやっているんだろう、とか、少しでも自分のプラスになるようなことはないかなって、練習を見たりしています」。12年目のベテランでありながらも向上心は尽きない。決して多くはないが、若手に質問することもある。「『この練習って何なの?』って、自分にプラスにならないかなって思って聞いているだけです。自分からアドバイスっていうのもおこがましいですし、そんな立場ではない。聞かれたら答えるようにはしていますし、一緒に練習するようにはしています」。
筑後で日々を過ごす表情に暗さはない。「現役をやっている以上は常に1軍で出続けることを目標にしています。そのために足りないところは補いながら、貪欲に後輩からでも盗んでいこう、っていうところじゃないですか。(投球に関して)手応えもありますし、もっともっと上がってくると思いますし、そこを目指してやりたいなと思っています」。勝負の終盤戦で1軍の戦力になれるよう、今できることにフォーカスしている。
もちろん苦い思いもある。「そうですね、しんどい……それはシーズンが終わってから考えることかなと思う。今は切り替えることでしか先に進めないので。そういったところは振り返らないようにしていますし、自分の状態を最大限に上げるための努力っていうのは怠らずにやっている感じです」。東浜の力が必要になるときはきっと来る。そう信じて1軍復帰の時を待ちたい。