7月26日の2軍戦で実戦復帰…さっそく本塁打で存在感アピール
今季2度目の骨折に、三森大貴内野手の気持ちもさすがに「折れっぱなし」だった。それでも必死に前を向いた。今回も診断結果よりも早く実戦復帰した“軍師”が「再々スタート」の号砲を響かせた。
26日にタマスタ筑後で行われたウエスタン・リーグのくふうハヤテ戦。「2番・DH」で先発した三森は3回の第2打席に右越え本塁打を放った。試合後、取材に応じた三森は「打った感じ的にもいったかなって感じでしたけど、思ったよりギリギリだったので。危なかったですね」。久々に浮かべた笑みからは充実感が伝わってきた。
今季は次から次へとアクシデントに見舞われた。開幕直後、4月2日のロッテ戦前に行われたシートノック中に右手人差し指を骨折。同28日にスピード復帰したが、5月30日の巨人戦で守備中に再び右手の指を負傷。右示指末節骨関節内脱臼骨折と診断され、全治2~3か月の見込みとされた。普段からポーカーフェイスの三森でも、さすがに表情が曇った。
「結構しんどかったですね、今回は。骨折したこともキツかったですし、またここから立ち上げていくっていうのを考えたら、そこは結構しんどかったですね」
今季は春先から牧原大成内野手との正二塁手争いに身を置いた。開幕スタメンを勝ち取ることは出来なかったが、1軍入り。虎視眈々とチャンスを狙ってきた。しかし、開幕6戦目にしてまさかの故障離脱。「何してんだろうな……」と唇を噛んだが、気持ちは折れなかった。
全治4週間の見込みと診断されたにもかかわらず、「僕にとって野球ができればそれが完治なので」と2週間余りで実戦復帰。4月28日に1軍の舞台へ戻ると、同30日の楽天戦では3安打3打点の活躍を見せた。5月6日の日本ハム戦でも3安打4打点。くしくも同時期に二塁のポジションを争った牧原大が離脱。ここからだと言わんばかりにアピールしてみせた。
ところが、悪夢は再び訪れた。復帰後わずか1か月余りで再び右手人差し指を骨折。1度目に骨折した際は、早期復帰を目指して必死にリハビリ生活を送ってきた。苦労の甲斐もあって早期復帰し、巻き返しを図ろうというタイミングでのアクシデント。また一からのリハビリを考えると、気が遠くなる思いだった。
それでも2度目の骨折から2か月足らずの7月26日、三森はグラウンドに戻ってきた。そして文句のつけようがない結果を残して見せた。「もう(気持ちは)折れっぱなしでしたけど、こうやって試合に出ることによって、それも晴れていくかなとは思うので。ここからいい日常に戻れるように頑張りたいなと思います」。失った時間は、野球のプレーでしか取り戻せない。復帰戦での一発は、自身にとっても光となったに違いない。
苦しい日々を乗り越えられたのはなぜか。「家族もそうですし、もう野球しか(ない)。あとは結果と向き合いながら日々やっていくしかないと思うので。気持ちが晴れるような結果で終われるようにできればなと思います」。
前半戦だけで2度、痛みも苦しみも味わった。それでも、シーズンはまだ50試合以上残っている。「1年終わって、良かったと思えるように。ここからまたしっかりやっていけるように。なんとかもう1回、自分の中で奮い立たせながらやりたい」。静かに闘志を燃やした。
「体の状態は問題ないですし、もう指だけっていう感じだったので。最初の段階からあんまり気にせずにバットは振れていたので。もう問題なくできるかなと思います」。苦難の日々を乗り越え、再び戦いの舞台へ。その時は一刻一刻と近づいている。
(上杉あずさ / Azusa Uesugi)