今季は全62試合のうち、先発マスクは43試合…甲斐が考える「今季の役割」
ホークスの絶対的正捕手としてホームベースを守り続けてきた甲斐拓也捕手が、今季はベンチを温める機会が増えてきている。首脳陣は5年目の海野隆司捕手との併用を選択。侍ジャパンでも世界一を経験するなど、「日本の正捕手」としてもプレーしてきた31歳は今、何を思うのか——。
交流戦を終え、2位の日本ハムに8.5ゲーム差をつけてパ・リーグで独走しているホークス。そんな中で、今季は甲斐の名前が先発オーダーから外れることも目立っている。ここまでの全62試合でスタメンマスクを被ったのは43試合。2017年から昨季まで7年連続で100試合以上に出場し、うち5年は130試合以上と正捕手としての立場を確立した男が、現在の心境について静かに口を開いた。
「(チームが)そういう方針でやっていると思いますし、もちろん今までとは違う形になっていると思うので。それはそれで、自分のやるべきことをしっかりやるしかないという感じですね」
淡々とした語り口だが、一野球人としての純粋な闘争心がなくなったわけではない。「それがいいと思っているわけではないですし、もちろん野球選手である以上は多く試合に出てこそ意味があるとは思っている。今で満足しているかといえば、当然満足するわけはないですよね」。
選手起用は当然、首脳陣が決めること。「自分にどうこうできない部分はやっぱりあるので」と、甲斐自身も理解はしている。選手としてできることは、現状を悲観することではない。先発を外れた試合、ベンチでの定位置は一塁側カメラマン席のそば。身を乗り出し、じっと戦況を見つめている。
「今やれることは、自分が(試合に)出た時にしっかり仕事ができるように準備するだけ。どういった形で試合に入るか分からないですし、(ベンチでは)試合に入っているつもりで見てるっていう感じです」
11月には32歳を迎える甲斐。4月には国内FA権を取得し、野球人生において今季は大きな分岐点となる。「今年1年で野球が終わると僕は思っていないので。この先ももちろん野球選手として試合に出られるように、自分の中で考えてやらないといけない。何日か先とか、何か月先とかじゃなくて、今年の中である程度のプランを考えてやってます」。
普段の練習でも、これまで通りの明るい振る舞いは変わらない。それはプロ14年で学んだチームのための行動だ。「こういった現状をプラスにというか、なんとかいい方向に持っていけるようにしないといけないな。やるべきことを、まず今年はやれればいいのかなと思っています」。穏やかな口調は最後まで変わらなかった。
(長濱幸治 / Kouji Nagahama)