プロ初先発&初安打を記録…初のお立ち台は「まぶしすぎて何も見えなかった」
打撃マシンの球でさえバットに当たらなかった男は、3年半でたくましく成長した。4年目の笹川吉康外野手が14日の阪神戦(みずほPayPayドーム)でプロ初先発し、5回に初安打となる中前打をマーク。その後に廣瀨隆太内野手のプロ初アーチとなる決勝2ランが飛び出した。「8番・右翼」でスタメン起用した小久保裕紀監督も「久しぶりに“筑後ホークス”の活躍で勝てました」と表情をほころばせた。
横浜商高から2020年ドラフト2位で入団。かつて柳田悠岐外野手が付けていた背番号「44」を与えられたのは、まぎれもなく球団の期待の表れだった。公称193センチ、95キロの体型からも、周囲からは「ギータ2世」と呼ばれた。それでも、船出は決して順調なものではなかった。
2021年1月の新人合同自主トレで象徴的なシーンがあった。打撃マシンを使ったバッティング練習に臨んだが、打球がなかなか打撃ケージから出ない。時には空振りもあった。1軍の野手なら柵越えを連発するマシン打撃だが、当時のドラフト2位ルーキーは苦戦。見守っていた当時の森浩之3軍監督は「まあ、なかなかね……。まだ18歳だから」と苦笑いを浮かべるほどだった。
さっそく味わった「洗礼」にも、受けとめは実にあっけらかんとしたものだった。「別になにも感じなかったというか、高校時代にあまり打撃マシンを使った練習はしてなかったんで。打てなくてヤバいとか、一切考えなかったっす」。大胆不敵な笑みまで師匠似だった。
14日の試合後に行われた囲みでも「ギータ節」ならぬ「笹川節」が全開だった。手元に戻ってきた初ヒットのボールは「キャッチボールに使おうかな」とにやり。横浜商高の2年生時に投手として、慶応高3年の廣瀨と対戦経験があったが、「僕あんまり人のこと覚えないんですよね……」とぽつり。「廣瀨さんが『俺は打った』って言っていたんで、打たれたらしいです」と明かし、報道陣を笑わせた。
お立ち台に上がったのも、もちろんプロ初だったが、「まぶしすぎて何も見えなかったです」とにっこり。爆笑が絶えない囲み取材となったが、最後は「ただのヒットでも、すごい歓声だったので。ここでもっと活躍して、もっと歓声を聞けるように頑張りたいです」と初々しく決意を示した。
過去の自主トレで弟子入りした師匠・柳田が故障した後は、まだ連絡ができていないという。「柳田さんがどういう気持ちかわからないので、ちょっと遠慮してます」。今は自身の活躍で少しでも笑顔になってくれればいい。「自分が1軍で柳田さんの帰りを待てるように。『おかえりなさい』と言えたら一番いいですね」。その目標のため、まだまだ1軍の舞台で暴れるつもりだ。
(長濱幸治 / Kouji Nagahama)