熱い戦いを続けているのは、首位を快走する1軍だけじゃない。2軍でも熾烈な競争が繰り広げられている。「ライバル心はあります」とハッキリ口にするのは三浦瑞樹投手だ。視線の先にいたのは、同じ先発左腕の前田純投手。憧れの本拠地のマウンドに立つライバルの姿を見て「悔しいです」と呟いた。
ホークスの2軍は4日から6日まで、1軍の本拠地であるみずほPayPayドームで、ウエスタン・リーグの中日戦に臨んだ。まだ1軍経験のないような若鷹たちに、目指すべき舞台を実際に体験させることで、モチベーションをより高めてもらおうという球団の狙いが込められており、2023年に再開された。
この本拠地での開催を楽しみにしていた1人が三浦だった。「ドームで試合があるっていうのはもうずっと知っていたので、絶対にそこで投げてやろうと思ってたんですけど……」。ただ、先発投手にはどうしてもローテーションの順番があり、本拠地で投げられるかどうかは、この順番が鍵を握る。
三浦は5月31日の同リーグ阪神戦(鳴尾浜)で先発し、8回途中4安打1失点と好投した。金曜日の先発マウンドを任され、三浦は気づいた。「あれ? 待って。これ(ドームで)投げられないじゃん」。先発投手は基本、中6日以上の登板間隔を空ける。金曜に先発したことで、必然的に三浦がドームで投げられる可能性はほぼゼロに等しくなった。「しょうがないですけどね」と受け止めつつも、残念な思いはあった。
この3連戦の2戦目でドームのマウンドに上がったのが、同じ育成左腕の前田純だった。三浦は前田純の姿を見て「悔しいです。代わってほしかったなって思いながら見ていました。いいなって」と、素直な思いを溢す。目指すべきは支配下登録され、1軍の選手として投げることだというのは承知の上ではあるが、それでも貴重な経験を積んだ前田純が羨ましくもあった。
三浦と前田純は支配下登録の筆頭候補になっている。現在、ウエスタン・リーグで防御率上位はこの2人。前田純が1.19で1位、三浦が1.24で続く。共に開幕から2軍のローテを守り、好成績を残している。共に育成で、同じ左腕。背格好は違えども、緩急を武器にするという点でも似ている部分がある。残りの支配下枠は4つ。互いを意識しないわけがない。
「マエジュン(前田純)の数字、見ますね。すごい見ます(笑)『今日も点取られていないじゃん』って思いながら」。三浦は素直にこう認める。良きライバル関係で「あんまり褒めたくないんですけど、いい刺激にしています。アイツも抑えているから、俺も抑えないといけないなっていう感じになる」。年齢では三浦の方が1つ上。先輩として、負けられない意地もある。
みずほPayPayドームで過ごした3日間は、黙々と練習に励んだ。「最初は『おお!』って感じでした。ここで1軍の選手は走ったりするんだな、早くここで俺も一緒にやりたいなって思いました」。練習するだけでもワクワクした高揚感があった。ランニングをするにしても「PP(ポール間走)をいつもよりもスラスラ走れたなぁって感じはありました」と、軽快にこなせた感覚があった。より力を発揮させてくれる不思議な力のある場所だからこそ、投げたい気持ちは強くなった。
「去年はもうほとんど苦しかった」
昨季は自信を失いかけるほどに苦しんだ。「全然結果も出なかったですし、投げても内容も全然ダメダメ。勝ちがつくこともほとんどなかった」。2軍戦で5試合に登板して0勝(3敗)。競争の中で先発機会を掴むことも簡単ではなく、限られたチャンスで思うような結果も出せなかった。もどかしい1年を過ごしたが、今はもう別人のようだ。「自信が持てるようになりました。真っすぐも含めて全球種」。身をもって、昨季からの成長を感じているから、マウンドに立つ姿にも自信が漲っている
ドームでの登板がなかったのは残念だが、三浦は「1軍の満員の(ファンが見守る)中で投げられればいいって思っているので。状態をキープしながら支配下を目指すだけなんで」と力強く誓う。前田純の登板から2日後、7日の同リーグ・オリックス戦(舞洲)で7回途中1失点と好投した。支配下登録の期限まで2か月を切った。ライバルたちにも、自分自身にも負けまいと、三浦は熱く腕を振る。