「下を向かずにいたのはタニのおかげ」 柳町達と谷川原健太…2軍で支えあった2人の“絆”

ソフトバンク・谷川原健太(左)と柳町達【写真:竹村岳】
ソフトバンク・谷川原健太(左)と柳町達【写真:竹村岳】

柳町達の今季初安打は5月28日…谷川原健太も「達なら打つだろうな」

 気持ちを理解し合える友がいたから、苦しかった時期を乗り越えられた。自分の姿を後輩が見ている自覚があるから、毅然と戦える。ソフトバンクは5日の中日戦(バンテリンドーム)で5-1で勝利した。2安打1打点で貢献したのが、柳町達外野手だ。開幕以降、2軍で出番を待ち続ける中で、支え合ったのが谷川原健太捕手の存在だった。2人の絆に迫る。

 5日は、2点を奪ってなお2死二塁で打席へ。左腕・小笠原から中前に弾き返して、追加点を奪った。「カウント有利で思い切って自分バッティングができました。コンさん(近藤)に続いていくことができて良かったです」。8回にも二塁打を放ち、今季は8試合の出場ながらも打率.417を記録。5月31日の広島戦(みずほPayPayドーム)で柳田悠岐外野手が離脱した中で、自分の居場所を掴もうと必死に戦っている。

 柳町の今季初安打は、5月28日の巨人戦(東京ドーム)。7回に代打で登場すると、左前に弾き返した。開幕から2軍でチャンスをひたすらに待ち、44試合を消化したタイミングで呼ばれた。その1打席目でいきなり快音を響かせた。腐らずに前だけを見てきた何よりの証だ。この一打を谷川原も「見ていました。やばいっす、あいつ最強です」と言う。

「達なら打つだろうなと思って見ていたら、普通に打ったのでさすがだなって思います。達も頑張っていたので、チャンスを掴んでいましたし僕も2軍で頑張っておかないとって思いました」

 柳町と同じく、谷川原もオープン戦での競争に敗れる形で、2軍調整を続けている。今季から捕手に専念したが、開幕から1軍は捕手2人体制。6月4日には、嶺井博希捕手が1軍に呼ばれた。柳町とチャンスを待ち続けていた日々を「結構ご飯行ったりしていましたね。2人でも行きますし。遠征の時はめっちゃ行っていました」と振り返る。谷川原自身はもちろん、柳町の腐らずに前を見ていた姿勢も「簡単じゃないですよ。メンタルにもきますけど(自分も)やらないといけない」と言い聞かせていた。チャンスを待つという同じ境遇にいたからこそ、2人の絆は深くなった。

 柳町も、谷川原の存在を「同学年で色々と話しやすいですし、ご飯とかもよく行っていたので。苦しい時期でしたけど、それでも一緒に楽しくじゃないですけど。下を向かずにいられたのはタニのおかげ。2人で頑張れたのはありました」と頼もしく感じていた。出番を待ち、その思いを思う存分に結果に繋げている。ファームの選手たちにも、柳町の存在は刺激を与えているはずだ。「モチベーションになってくれたら嬉しいですし、僕自身は待ちに待った分、頑張らないといけない立場なので」とうなずく。

ソフトバンク・柳町達(左)と谷川原健太【写真:竹村岳】
ソフトバンク・柳町達(左)と谷川原健太【写真:竹村岳】

 津森宥紀投手や大関友久投手、杉山一樹投手ら、投手陣にもメンバーが多い1997年組。野手陣を谷川原は「仲良いと思いますよ」と表現する。「中心はいないんですけど、店を予約してくれるのは晃(川瀬晃内野手)ですね。晃に任せておけばなんとかなります。あいつにお願いしますって言ったらなんでもやってくれます」。柳町とも「気は合いますよ、B型同士ですし。でも2人でご飯に行く時は僕が予約しますね。あいつしてくれないんですよ」と笑って語る。

 柳町も「確かに僕は何も決めないので、タニが決めてくれてました」と認める。そんな2人だが、5月の静岡遠征では柳町がお店を決めてくれたという。「こないだ静岡に行った時は予約してくれたんですけど、それが初めてだったので。その時は焼肉でした。めっちゃ美味しかったです。焼肉行こうやってなったので、任せましたね。あいつ知っていたので」と谷川原が明かす。踏み込んだ野球の話はあまりしないそうだが、立場が似た同級生がいるだけで、頼もしかった。「今日ご飯行こうや」が、2人の中の“合図”だった。

 多くの時間をともにしたファームの時期。谷川原にとっても、柳町の人柄をより理解できるようになった。「真面目です。しっかりしていますけど、しっかりしすぎてもいないし。頭いい感じに見えはしますけど基本はバカなので、接しやすいです」と親しみを込めて言う。「喜びはしますけど、基本は一定のテンション。打ち取られたり三振した時も『まあいいや、明日頑張ろ』みたいな、切り替えが早いイメージはありますね」という一面も、1軍で柳町が結果を出せる大きな要因だ。苦しい時期をともにしたからこそ、必ず2人で1軍の舞台に立ちたい。

 谷川原が「僕も頑張らないといけないです」と言えば、柳町も「1軍で結果を出すことだけを考えて、活躍に(ファームの)みんなが火がついて頑張ってくれるなら、それがいい相乗効果になってくれたら」と話す。気持ちを知って、支え合える同学年がいるから、グラウンドに立ち続けることができる。

(竹村岳 / Gaku Takemura)