長谷川威展の“宝物”に刻まれた柳田悠岐のサイン 「いらんやろ!」も快くペンを握った主砲

ソフトバンク・長谷川威展【写真:荒川祐史】
ソフトバンク・長谷川威展【写真:荒川祐史】

長谷川の「宝物」 柳田のサイン入りウイニングボールは自宅のテレビ横に

 自宅のテレビ横にはかけがえのない“宝物”が置かれている。「まさかボールが返ってくるなんて思ってもいなかったし、おまけにサインまで書いてくれるなんて……」。長谷川威展投手が大切に保管する1個のウイニングボール。そこには柳田悠岐外野手のサインが書かれていた。

 移籍後初勝利を挙げた試合を思い起こさせるような劇的展開だった。今季4勝目を挙げた2日の広島戦(みずほPayPayドーム)。試合にケリを付けたのは近藤健介外野手のサヨナラ2ランだった。「さすがに今回のボールはもらわなかったです」。昨秋の現役ドラフトを経て、ソフトバンクに加入した左腕。今季初勝利を挙げたのも、柳田がサヨナラアーチを放った4月29日の西武戦(同)だった。

「サイン下さい、って……。さすがにちょっと緊張しましたね」。試合後のロッカールームで長谷川が柳田に手渡したのは、自身のウイニングボール。球団関係者の助力により、サヨナラホームランの記念球を手にしたファンから譲り受けたものだった。

柳田悠岐のサイン入りウイニングボール【写真:本人提供】
柳田悠岐のサイン入りウイニングボール【写真:本人提供】

 投手と野手の違いもあり、普段はそこまで接点はないという2人。「今日は本当にありがとうございました!」。お礼を口にした後に、勇気を出してサインをお願いした。「いや、いらんやろ! 自分の(サイン)書けよ」。そう笑いつつも、柳田は快くペンを走らせたという。

 4月29日の試合は2点ビハインドの9回に登板。1イニングをピシャリと抑えると、その裏に柳田の逆転サヨナラ3ランが飛び出した。「最初はただただ興奮して。自分が勝利投手だってことには全然気づかなかったです。ウイニングボールは戻ってこないだろうと思ってました」と長谷川は振り返る。

 日本ハムからソフトバンクに移籍してきた左腕を祝おうという、球団関係者、そして柳田の好意が詰まった宝物だ。「(怪我で離脱中の)柳田さんがいない間にチームの順位が落ちないように、僕なりに全力を尽くしたいです」。中継ぎながらリーグ3位タイの4勝を挙げている左腕。驚異的な勝ち運を呼び込んでいるのは、テレビ横に飾られたウイニングボールの存在かもしれない。

(長濱幸治 / Kouji Nagahama)