球史を彩った“スーパーキャッチャー”が、弱冠20歳の育成捕手を絶賛した。「俺が19歳の時よりも圧倒的に上手いと思うし、将来的にはメジャーでプレーできるくらい、スケールのでかいキャッチャーになってほしい」。そう口にしたのは城島健司球団会長付特別アドバイザー兼シニアコーディネーター。視線の先にいるのは、入団してから2軍戦出場すらない育成2年目の盛島稜大捕手だ。
29日に東京ドームで取材に応じた城島氏は、興奮気味に“盛島評”を口にした。「打つことでも守ることでも、プロ野球のキャッチャーが塗り替えてきたもの(記録)を全部覆してくれるような選手になってくれないかなという期待は持ってますね」。
沖縄・興南高から2022年育成ドラフト14巡目で入団した盛島は、同年ドラフト会議で指名された全126人中、最後の126番目に名前を呼ばれた。今年3月のオープン戦では1軍に帯同するなど球団の評価は高く、今季は3、4軍の非公式戦で39試合に出場し、打率.343、3本塁打、26打点をマーク(5月27日時点)。187センチ、104キロの堂々たる体格を誇る期待の捕手だ。
城島氏が盛島の存在を知ったのは、ひょんなきっかけだった。「彼がトレーニングルームでウエートをしてたんです。何人も選手がいる中で体がでかかったから、『あいつ誰だろう』と(人に)聞いたら、『盛島っていう子ですよ。キャッチャーですよ』って。それが初めての出会いで」と笑いながら明かした。
驚くべきは、“偶然の連鎖”だった。「(今年4月に行われた3軍の)韓国遠征をテレビで小久保さんが見てて、「『ジョー、あのキャッチャー、いいキャッチャーだな。守ってる姿が非常にいい』と言っていて。こういうのがちょうど重なった日に僕がドームにいて、王会長がその話を聞いて、『お、明後日(筑後のファーム施設に)行くから見てくるよ』って」。城島氏から小久保裕紀監督、そして王貞治球団会長まで熱視線を向けることになった経緯を明かした。
城島氏は野球選手にとって“運”も重要な要素だという。「これも縁じゃないですか。彼は持っているんですよ」。盛島の魅力については「でけえっす。でかい。でかいよ」とにんまり。「彼はそれだけの体とポテンシャルを親からもらったんだから。活かしなさいよっていう話はしました」とアドバイスを送った。
5月27日に20歳を迎えたばかりの盛島に対し、城島氏は自らの過去を重ねた。「僕が19歳の時は2軍でホームランを1本しか打てなくて。(打率)3割は打ってたんですけど、根本(陸夫)さんに『君に期待しているのはそんなことじゃない。もっとホームラン打てるバッターになりなさい』と言われて。その次の年に打率は下がったけどホームランが増えた。彼にとってはそういう時期なのかもしれない」と急成長に期待をかけた。
盛島に対する球団の評価は「最初から高かったわけじゃない」という。それでも、「期待値が右肩上がりというか、伸びしろがすごい。いい出会いをして、自分の可能性をどーんと突き抜けていってほしい」と“城島節”は止まらない。今後の育成方針についても「もうちょっと上の軍(2軍)までチャレンジさせてみようかとか。例えば1軍予備軍のピッチャー、(1軍から)調整で来ているピッチャーを受けさせてみようかなと。そういうチャンスも生まれてくる」と言及した。
「将来的に見たら、ホームランも30本、40本、50本って打ってくれるようなでかい選手になってほしいなと思います」。城島氏は最後までハイテンションだった。球団のレジェンドをここまで熱くさせる盛島という若鷹の成長から目が離せない。