【連載・近藤健介】天才打者が語る“3割の価値” 投手の急激な進化…「野球が変わった」

ソフトバンク・近藤健介【写真:荒川祐史】
ソフトバンク・近藤健介【写真:荒川祐史】

近藤健介の月イチ連載がスタート 初回のテーマは「打率3割」

 鷹フルをご愛読の皆さま、初めまして! この度、月1度ほどのペースで連載を担当させていただくことになりました近藤健介です。野球に関するトピックはもちろん、プライベートについても可能な限りお話しさせてもらえればと思っています。これからよろしくお願いします!

 初回のテーマは「打率3割」についてです。僕は2012年に日本ハムへ入団しました。プロ入りした時から「まずは3割打者」というのが目標でしたし、今は「打率3割、出塁率4割」を求められる選手だと思っています。そこはもう、やらないといけないというか、確実にクリアするべきノルマと捉えています。それでも個人的な感覚では、ここ2、3年は本当に「3割ってムズイな」と思うことが増えてきました。

 ファンの方も感じられているとは思いますが、最近は本当にピッチャーのレベルが上がっています。ロッテの(佐々木)朗希やオリックスの宮城(大弥)が出てきて、西武の今井(達也)や日本ハムの(伊藤)大海もそう。そういうパワーピッチャーが各球団にゴロゴロといます。正直、「野球が変わったな」という感覚すら覚えるほどです。

 単純な話をすれば、球速が上がれば上がるほど対応は難しいです。もちろんボールの強さやキレも関係しますけど、やっぱり速いというのは難しい。それならどう対処するか。僕の場合は「力を抜くこと」が一番重要だと思っています。

ソフトバンク・近藤健介【写真:竹村岳】
ソフトバンク・近藤健介【写真:竹村岳】

 どうしてもスピードが速くなると、自分も(ボールを)迎えにいったり、頭が突っ込んだりしてしまう。だからこそ、極端に言えば「ゆっくり振る」というイメージを持っています。去年は26本のホームランを打って、タイトルもいただきました。以前より強く振っているイメージも持たれますが、あくまで自分の中では8割くらいの(力を入れた)スイングの方がいい結果が出る感覚はあります。

 それでもチャンスでの打席や、一打サヨナラの場面で当然、僕も力が入ります。そういう時、心がけているのは球場全体を見渡すことです。僕は左打者なので、センターからレフト方向は見えますけど、ライト方向への視野が狭くなりがちです。そうなると、体も右肩が中に入ったり、頭突っ込んだりしちゃうので。そういう時にチェックポイントにしてることがあります。

 それは相手のファーストを見ることです。打席で構えているときにファーストが見れているようなイメージがあれば、気持ちの面でも余裕があって、体も入れ込みすぎてない状態になれる。どうしてもボールに集中しすぎて「うわ、忘れてた」みたいな時も当然ありますけど、1球ファウルを打って「うわ、頭が突っ込んでるな」と思ったらファーストを見たりしています。そんなところもファンの方に見てもらえれば、より楽しんでもらえるかと思います。

 少し技術的な話になってしまいましたが、本当に僕がプロに入ってから10数年で投手のレベルはすごく上がっています。これからもっとすごいピッチャーも出てくると思いますし、そうなればなおさら、3割の価値っていうのも上がってくる。そこに挑んでいけることはプロ野球選手として楽しみしかないと思っています。

(聞き手・構成 長濱幸治 / Koji Nagahama)