なぜ甲斐拓也ではなかったのか 2年ぶりの「和田―海野バッテリー」結成の“真相”

ソフトバンク・和田毅(左)と海野隆司【写真:竹村岳】
ソフトバンク・和田毅(左)と海野隆司【写真:竹村岳】

和田と2年ぶりバッテリーの海野が好リード…小久保監督は「コーチの発案」

 猛打の裏で見逃せなかったのが「和田―海野バッテリー」だった。22日の楽天戦(京セラドーム)は12-0で快勝。21得点した21日の試合に続き、打線が2試合連続の2桁得点をマークした。先発の和田毅投手は今季2度目の登板で7回3安打無四球無失点と快投し、今季2勝目。43歳の投球を輝かせたのは、約2年ぶりにバッテリーを組んだ海野隆司捕手だった。正捕手の甲斐拓也捕手ではなく、なぜ5年目の海野を起用したのか。首脳陣の狙いを探った。

「海野も力をつけてきているというか、海野と組んでみても面白いんじゃないかっていうコーチの発案があったので。『行きましょうか』ってことで」。試合後、小久保裕紀監督はさらりと起用の経緯を口にした。それならばと高谷裕亮バッテリーコーチに話を聞くと、丁寧にその狙いを明かしてくれた。

「(和田が)ずっと拓也と組んでいて。そこは悪い意味でというわけではなく、久しぶりに登板する和田さんと(海野が)どういう呼吸になるのかなというのが見たいと。今のうちにやらせてくださいと監督に提案しました」。高谷コーチが説明したのは、きわめてポジティブな観点での判断だったということだ。

 さらに起用の意図を語ってくれた。「拓也の引き出し方、海野の引き出し方というのがあって、それはお互いにとって勉強になると思うし、和田さんにとっても新たな発見が生まれる部分もあると思うので。そういう意味も込めて、考えながらやってはいます」。今季のスタメンマスクは甲斐が30試合、海野が11試合と捕手併用の形となっている。高谷コーチが期待するのは2人の間で生まれる“相乗効果”だ。

ソフトバンク・髙谷裕亮バッテリーコーチ【写真:竹村岳】
ソフトバンク・髙谷裕亮バッテリーコーチ【写真:竹村岳】

 大胆な起用法を可能にさせているのは、もちろん海野の成長があってこそだ。「だいぶ落ち着いてできるようにはなっている。(シーズンを通して)いろんなことを想定してというのはありますけど。いろんなパターンができるのであれば、それに越したことはないので」。先を見据えた“試験”と言ってもいいだろう。

 和田と海野がバッテリーを組んだのは2022年8月14日のオリックス戦が最後だった。この時は4回途中6失点。それ以降は甲斐とのコンビが続いていた。約2年ぶりにバッテリーを組んだ和田は「海野が本当にいろいろな球種を使いながら的を絞らせない配球をしてくれたので、より真っすぐを生かせたんじゃないかなと思います」と感謝を口にした。

 海野も2年前のことは覚えていながらも「そこは全然(意識に)考えなかった」という。「和田さんが素晴らしかった。それに尽きると思います」と先輩に敬意を示しつつ「和田さんのピッチングを崩さないように、話し合ってやりました。先輩ですけど、思っていることはしっかり伝えられました」とリードへの手応えを口にしていた。

 ここ数年は甲斐が絶対的な正捕手としてプレーしてきただけに、仮に離脱することがあればチームは一気に崩壊する危険性があった。今季、首脳陣は目先にとらわれず海野に経験を積ませる選択を取っている。甲斐も黙ってはいない。2人のライバル関係が、ホークスの力をより高めることになるのは間違いない。

(長濱幸治 / Kouji Nagahama)