5年目捕手の海野が存在感…今季先発マスク9試合でチームは6勝3敗
5年目の海野隆司捕手が“巣立ちの季節”を迎えている。即戦力捕手の期待を受けて2019年ドラフト2位で入団したが、昨季は8試合の出場にとどまった26歳。一方で今季はここまで14試合に出場し、うちスタメンマスクは9試合と存在感を示している。18日の西武戦(みずほPayPayドーム)では、首脳陣の大きな期待を感じさせるシーンがあった。
「勝たなきゃいけないというのは間違いなく思っている。どんな展開でも勝つことが一番なので」。フル出場した18日の試合後、海野は胸をなでおろした。投手陣を懸命にリードし、3-2の勝利に貢献。これで捕手として先発した試合の勝敗は6勝3敗となった。
海野にとって試合の分岐点になったのは1点を追う6回2死一、二塁で打席を迎えた場面だった。ベンチには代打の切り札、中村晃外野手が控えており、交代も十分に考えられたケース。「(その考えは)あるにはありました」と思いを正直に明かしたが、首脳陣の考えは固まっていた。
「今日は(若林に打たれた)初球のホームラン、(2回無死一、二塁での)バント失敗があって、『チャンスで取り返してこいよ』っていう感じでした」。試合後に振り返ったのは小久保裕紀監督だ。結果は凡退に終わったものの、海野に託そうという期待のタクトだった。
その思いは奈良原浩ヘッドコーチヘッドも同じだった。「(代打を)出してしまうのは簡単だけど、3打席目で交代いうのは海野のプラスにはならないという監督の判断だったと思います」と説明。「ダメだからバン(って代える)じゃなくて、ここで打席に立たせることで(成長のきっかけを)掴んでほしいというところまで考えている感じはしましたね」と指揮官の考えを代弁した。
開幕から2番手捕手として起用されている今季。当然海野も必死だ。今季、試合前のバント練習では最新マシンの「iPitch」が導入されており、実際の投手のスピードに近いボールに対してバントを行っている。様々な選手がそのスピードに苦戦する中、海野は防球ネットから1メートル以上も前に出て打球を転がしている。
「めちゃくちゃ速いです」と苦笑いしつつ、「一番速い球で目慣らししておけば、試合であれ以上はないので」と自ら工夫して試合に臨んでいる。守備面でも「展開次第でどうするべきか。そこを考えられるようになってきて、今はいろいろな引き出しを作れている感覚がある」という。実際に大津亮介投手が登板した5試合は全て先発マスクをかぶり、防御率1.41と好調を継続している右腕を力強く引っ張っている。
18日の試合では打撃面で反省する部分も多かったが、3回には源田の飛球を西武ベンチに飛び込んでキャッチする好プレーを見せるなど、首脳陣の起用に応えたいという強い気概を見せた。小久保監督も「勝ったんでね。キャッチャーは勝てばいいんで。最後まで行かせました」と評価を与えた。
チームにとって長年の課題と言われてきた「ポスト甲斐」の育成。今季は海野がその最右翼となっていることは間違いない。5年目で巣から旅立ち、上空を大きく舞うことができるか。若鷹は日々懸命に翼を広げようとしている。
(長濱幸治 / Kouji Nagahama)