投手のために考えたひと工夫 「前から思っていた」甲斐拓也が変えた“座る位置”

ソフトバンク・甲斐拓也【写真:荒川祐史】
ソフトバンク・甲斐拓也【写真:荒川祐史】

開幕から期間限定で取り入れた「投手の近くにいた方がいい」

 ホークスが好調を維持している。15日に敵地・楽天モバイルパークで行われた楽天戦に7-3で逆転勝利し、今季36試合を終えて24勝10敗2分けの貯金14。2位の日本ハムに3.5ゲーム差をつけて、パ・リーグの首位をひた走っている。

 リーグトップの23本塁打、151得点を叩き出す打線もさることながら、やはり原動力となっているのは投手陣だろう。36試合を終えてチーム防御率は2.05。一時は驚異の1点台に突入するなど、先発、リリーフ共に安定した働きを見せている。

 その投手陣を支えているのが甲斐拓也捕手と海野隆司捕手の2人。今季は小久保裕紀監督、高谷裕亮バッテリーコーチのもとで“捕手併用”で戦いを進め、ここまで甲斐が27試合、海野が8試合でスタメンマスクを被っている。海野の成長も見られる中で、正捕手の甲斐もまた、試行錯誤を繰り返していた。

 開幕してから1か月ちょっとの間、甲斐が昨季までと異なる取り組みをしていたのをご存知だろうか。それはベンチの座る位置。昨季までは監督、コーチに一番近い、ベンチの手前が“定位置”だったが、今季はベンチの一番奥、投手たちが座る場所に近いところに変えていた。甲斐はその意図をこう明かす。

「対戦がひと回りするまでというか、落ち着くまで、ピッチャーといろいろと話をしてやりたかったので、そっち(投手寄り)に行くようにしました。ピッチャーと1イニングずつ話をして、進めていきたかったので」

 これまでも投手とのコミュニケーションを大切にしてきた甲斐。バッテリーでのミーティングはもちろん、時には遠征先の宿舎の部屋を訪れて、意見を交わしたりすることもあった。投手が不安にならないように、打者の特徴やイニングの進め方など、お互いの考えをしっかりと擦り合わせていくのが信条だった。

 扇の要である捕手は、投手の状態や相手の出方など、見て、感じたことを首脳陣に伝え、首脳陣の考えを聞くことも役割の1つ。そのためにベンチでは監督、コーチの一番近くに座っていた。投手とは、イニング終わりにベンチへ戻りつつ言葉を交わし、ベンチに戻ってからは甲斐が投手のところまで歩み寄って会話をしていた。

「前からピッチャーの近くにいた方がいいな、と思っていたんです。ピッチャーの近くにいた方がいろいろ話をできる。イニングの進め方とかも伝えていきたかったので」。これまでの経験から考えていたアイデア。少なくとも開幕してしばらく、チームと投手陣が落ち着いて試合をこなせるようになるまでは、投手の側でコミュニケーションを図ることにした。

 昨季はV逸の一因となり、課題と言われていた投手陣だが、蓋を開けてみれば、ここまではリーグ屈指の結果、内容を見せている。「お互いに意思疎通もして、ひと回りちょっと終わったし、(位置は)戻しました」。5月のゴールデンウイークが終わる頃には、これまでの“定位置”へとベンチの席を戻した甲斐。投手陣を支えるために密かな工夫を凝らしていた。

(福谷佑介 / Yusuke Fukutani)