バントミスに「正直終わった」 川村友斗の育成時代…小久保監督に告げられた「明日から3軍」

ソフトバンク・川村友斗【写真:荒川祐史】
ソフトバンク・川村友斗【写真:荒川祐史】

7日に犠打を失敗してゲッツー…8日は成功させて「決まってよかった」

「川村、明日から3軍」

 夢を前にして宣告された、忘れられない言葉だ。ソフトバンクは8日、日本ハム戦(みずほPayPayドーム)に3-1で勝利し、同一カード3連勝を飾った。この結果に誰よりも安心していたのが、川村友斗外野手だった。バントには、忘れてはいけない苦い経験がある。絶対に決めると臨んだ打席で失敗し、3軍行きを通告されたのだ。

 同点の4回に三森大貴内野手が勝ち越し打。6回には栗原陵矢内野手の犠飛で2点差として、迎えた7回だった。先頭の三森が中前打で出塁すると、川村が打席へ。2ボールからの3球目を転がして犠打を決めた。得点には至らずとも「今日は決まってよかったです」と胸をなで下ろしたのは、前日にバントミスをしてしまったから。

 7日の同戦、9回1死一塁でも犠打を試みた。バットの先に当たった打球は捕手の目の前に転がり、すぐさま二塁に転送。一塁もアウトになる併殺打で、サヨナラのチャンスを作り出すことができなかった。結果的にチームは勝ったものの、延長12回無死二塁には代打を送られて交代となった。脳裏によぎったのは、2023年6月の出来事。バントをミスして、2軍監督だった小久保監督に3軍降格を告げられた日だ。

「試合後のミーティングで、小久保監督から『川村、明日から3軍』って言われました。それもあったので、昨日(7日)の失敗は本当にやばかったです。でも今日(8日)のあの場面は絶対にバントが出ると思っていたので」

 状況まで克明に覚えている。「舞洲でのオリックス戦で9回表の、ノーアウト一塁。2球失敗して、フルカウントになって、エンドランを空振りして三振ゲッツーになりました。そこから7月の20日くらいまで3軍になりました」。当時の背番号は132。7月末に迫る支配下登録の期限を前にして、痛恨の3軍降格となっただけに、当時のミーティングも「めっちゃ覚えています。『やばいな』って思っていましたし、(7月末まで)あと1か月くらいしかなかったので、正直その時は『終わった』と思いました」と忘れられない思い出だ。

 バントミスがどれほどの意味を持つのか。身を持って知っているから、7日の失敗では「めちゃくちゃ(メンタルに)来ました……。昨日負けていたら本当にやばかったです。勝ってくれたのが一番でした」と、とにかくチームの勝利に救われた。試合後の小久保監督の「バントはあまり上手じゃないとわかっている」というコメントも見たそうで「余計に、どうしても決めたかったです」と、何度も自分を奮い立たせて8日を迎えた。

 7日に失敗した際の心境を具体的に振り返る。「いいのか悪いのかわからないですけど、9回裏に失敗して、10回からはなんだかフワフワしていたというか……。守備の時は集中していたんですけど」と言う。試合中ではあるが、気持ちのコントロールができなかったのか、集中できないような状態だったそう。延長12回の打席で代打を送られたことには「場面も場面だったので(自分が出ていても)絶対にバントだと思っていました。『次あったら絶対決めてやろう』と思っていましたけど代わったので、あとは祈るだけでした」と明かす。

ソフトバンク・川村友斗(奥)と本多雄一内野守備走塁兼作戦コーチ【写真:長濱幸治】
ソフトバンク・川村友斗(奥)と本多雄一内野守備走塁兼作戦コーチ【写真:長濱幸治】

 試合後に首脳陣から「明日も行くぞ」と、ミスがあった中でもスタメン起用を明言された。7日の夜は、本多雄一内野守備走塁兼作戦コーチと室内練習場へ。「本多コーチに昨日の夜から練習についてもらって、投げてもらっていました」と、付きっきりで技術指導を受けていた。「昨日はちょっと落ち込んだんですけど、井出(竜也外野守備走塁兼作戦)コーチも『試合は進んでいく』と。試合に出るからには集中しようと思っていました」。1軍で出場機会を得て1年目、たくさんの人が声をかけてくれたことも嬉しかった。

 バントを決めた8日は、7回無死一塁の状況。小久保監督が「成功するまで(サインを)出し続けてやろうと思っていたんで。彼は2軍の時から一緒にやっているから。僕のその性格も分かっているんで。絶対に出されるとわかっていた」と言えば、川村も「普通にバントだと思っていました」と頷く。2軍時代からお互いを知っているからこそ、サインは容易に予想できた。「自分が2人目の打者だったんですけど、本多コーチに『もし(先頭が塁に)出たら自信持っていけよ』と言われました」と、背筋を伸ばして迎えた打席だった。成功という結果が、何よりも自分を安心させてくれた。

 失敗を繰り返して、切り替えて、今度は成功できるように準備する。プロ野球選手として、誰もが通ってきた道のりだ。「あの(7日の)ミスはマジでやばかったです。だから今日は決まってよかったです。自分が落ち込んでいても、明日には試合があるので。反省は大事ですけど、反省と切り替えは別だと思いますから」。そう語る川村友斗の表情は、確実にたくましくなっている。

(竹村岳 / Gaku Takemura)