心に響いた斉藤和巳4軍監督の言葉 2か月で体重6キロ増…井崎燦志郎が遂げる変化と挑戦

ソフトバンク・井崎燦志郎【写真:上杉あずさ】
ソフトバンク・井崎燦志郎【写真:上杉あずさ】

「今年中に155キロを出したいなと思っていますし、自信もあります」

 155キロを目指し、着実に成長を遂げている。育成3年目の井崎燦志郎投手は大胆にその階段を上っている。2年目の昨季から著しい進化を見せ、期待値も上がってきている右腕は、さらなるスケールアップを目指して日々を過ごしている。

 一冬を越えて体が大きくなる選手は多くいるが、井崎は“この春だけ”でさらに逞しさを増した。春季キャンプ終了時に78キロだった体重は現在、6キロ増えて84キロに。わずか2か月で、6キロも増量に成功した。「投げる球も、結構変わってきているというか、結構手応えもあったんで」と、確かな変化を感じてきている。

 4軍の勝永将史ストレングス&コンディショニング担当とは「月に1キロ増やそう」と増量計画を立てている。井崎は「今年中に90キロぐらいまで行ったら、今の感じなら155キロは余裕で出るみたいな話をしていて。球速が全てじゃないんですけど、1個の目標として」と、モチベーションにしている。

 ウエートトレーニングと食事が、増量の主な方法だ。「ずっと何か食べてます」と、1時間ごとに間食、補食を摂っている。4月の韓国遠征では、宿舎のそばにあったファーストフード店「ロッテリア」に夕食後、毎日2度も通った。「夜ご飯を6時に食べて、7時にゼリー飲料とかを摂って、8時と9時にロッテリア食べていました」。ちなみに、まとめ買いではなく、毎回買いに行ったそう。空腹の時間を作らないように意識している。

 体の変化と影響を確かめるために実戦で“大胆な”取り組みにも打って出た。2日にタマスタ筑後で行われた四国アイランドリーグplusの愛媛との3軍戦。初回から“全力投球”で飛ばすことをテーマに先発マウンドに上がった。

 6回を投げて7安打5失点。結果は伴わなかったが、大きな収穫を得ることができた。初回から150キロを超える真っすぐをどんどん投げ込み、3者連続三振。2回も危なげなく3者凡退に抑え、最速は152キロをマークした。だが、その後、明らかに失速した。4回に3点を失うと、6回には自身のミスも絡んで、さらに2失点を喫した。

「自分のエラーとかもあって5点は取られたんですけど、結果よりは1、2回の内容が結構、自分ではしっくりきていて。たしかに、結果を出さないと上にはいけないと思うんですけど、今日は良かった」。5失点という結果以上に、全力で投げに行った1、2回の内容が井崎にとって手応えになった。

「(普段の先発の時は)ある程度バランスよく投げて、140キロ後半くらいで打ち取っていく感じなんですけど、ブルペンでも出力が出てうたんで『どこまで全力でいけるかな』みたいなものを試そうと思っていたんです。ちょっと割と早く、2回までしか持たなかったですね」

 自分のポテンシャルを感じることができた。一方で、現時点で“全力投球”では2イニングほどしか保たないことも分かった。「中継ぎでも先発でも投げられるように、常にフルで投げられるような練習を、と思って投げたんですけど、まだスタミナも全然足りてないです。先発ならもうちょっと出力を落とさないといけないとは思うんですけど、投げる体力は投げないとつかないと思うので」。前向きに受け止めている。

 昨季、出力は出るようになったが、体力面が明確な課題だった。140キロ台後半の出力であれば、6回くらいまでは球速も落ちずに投げられるようになった。だが、序盤からフルスロットルだと、6回には140キロ台前半まで球速が落ちた。目の前の結果を追い求めれば、出力を抑える選択になるだろう。ただ、井崎は「思いっきり投げていきながら、何回投げられるかみたいな意識は続けていきたい」と、挑戦を続けるつもりでいる。

 というのも、井崎の心に響いた言葉がある。「今年1年は目先の結果じゃなくて、先を見据えて、来年以降に勝負しろ」。斉藤和巳4軍監督からの助言だった。潜在能力は間違いない。2軍に定着するためには、とにかく3、4軍で結果を出したいところ。ただ、井崎は地に足を着けて、来年に勝負をかけられるための土台作りを続けていく決意をした。

 自己最速は昨季マークした153キロ。現在は球速表示がそれより出ていなくても、平均球速は上がり、空振りもファウルも取れている。「まずは、今年中に155キロを出したいなと思っていますし、出るっていう自信もあります」。大きな花を咲かせるため、着実に大胆にステップアップを続けている。

(上杉あずさ / Azusa Uesugi)