渡邊佑樹が気になる“同い年のゆうき” 海の向こうで活躍の元同僚に本音「本当にファン」

ソフトバンク・渡邊佑樹【写真:藤浦一都】
ソフトバンク・渡邊佑樹【写真:藤浦一都】

「1点差だとか意識しちゃうと、力んだり、体が動かなくなったりすると思う」

 次なる“左の中継ぎ”に名乗りを上げるのは、渡邊佑樹投手かもしれない。ソフトバンクに入団して今季が2年目の育成左腕が2軍で開幕から好投を続けている。20日に行われたウエスタン・リーグの広島戦(タマスタ筑後)で今季初失点を喫したものの、7試合で6回2/3投げて3安打1失点。2つのセーブを挙げ、防御率1.35とアピールしている。

 3月27日に行われた同リーグの広島戦(同)では2点差まで追い上げられた9回無死満塁の大ピンチでマウンドに上がった。絶体絶命のピンチでの登板だったが、併殺と三ゴロできっちりとリードを守り切って試合を締めくくった。松山秀明2軍監督は「もうナベ(渡邊佑)しかいないでしょう、あの場面で行けるとしたら。最高のアウトの取り方をしてくれた」と絶賛。渡邊佑も「監督やコーチが信頼して送り出してくれているってことなので、なんとかそれに応えられるように」とクールに振り返っていた。

 常に冷静沈着に見える渡邊佑にも気持ちの揺れはある。「毎試合、緊張していますよ。どんな場面で行っても『今日ストライク入るかな』って思ったりもしますし」と胸の内を明かしつつ、大ピンチでの登板には「あそこまで究極の場面やったら、もう『僕のせいじゃない』って思いますね」と笑う。松山2軍監督も「ちょっと調子を落としていた中で、大事な時に(抑えて)ね。あれは調子云々ではないと思うんですよ。メンタル的なところがすごく大きいと思う」と、そのマウンド度胸も評価していた。

 ここまで様々な場面でマウンドに送り出されているが、渡邊佑は「どこがやりたいとかは特にないです。もう与えられた場所でやるだけなんで」と欲はない。どんな状況でも心のブレが少ないのが持ち味でもある。「あまり考えず、とりあえずバッター1人1人。ストライク先行で行くのと、先頭バッターをまず抑えるっていう気持ちでどの試合も投げています。1点差だとか意識しちゃうと、力んだり、体が動かなくなったりすると思うので」。頭の中はシンプルだ。

 昔から感情の起伏はあまりなかったという。「人に怒ったこともあまりないですし、人は人って感じです」。ただ、海の向こうで奮闘する同級生の話になると、笑顔がこぼれる。楽天時代から仲が良いパドレスの松井裕樹投手は気になる存在だ。「マツ、すごいですね。やっぱり嬉しいですよね。頑張ってくれると」。“同い年のゆうき”の話になると自然と顔が綻ぶ。

 松井は2013年ドラフト1巡目で楽天に高卒で入団。渡邊佑は2017年ドラフト4巡目で大卒入団だった。入団した年は違えど、同い年で同じ名前のサウスポー同士ということで、自然と仲は深まった。渡邊佑は「もうあそこまで言ったら刺激(を受ける)とかもう何も(ないです)。本当にファンです。皆さんと一緒の感じです。友達が活躍してるっていうか」と笑う。

 ブレない心で渡邊佑は渡邊佑らしく日々を過ごす。自分のやるべきことに目を向け、どんな場面でも淡々と腕を振る。「(支配下登録枠は)残り5枠あるんで、しっかり自分のやるべきことをやって、首脳陣がそれを判断してくれれば。まずは試合でちゃんと抑えていきたいです」。現役ドラフトで加入した長谷川威展投手が1軍の中継ぎでただ1人の左腕になっている現状にも「そこに僕も食い込めるようにっていう思いはありますけど、焦ったところでしょうがないんで」と気にも留めない。どんな役割もこなすタフネス左腕は求められるその時を待つ。

(上杉あずさ / Azusa Uesugi)