オスナの苦悩…被弾の夜は「本当にキツかった」 感激した小久保監督の“ある言葉”

ソフトバンクのロベルト・オスナ【写真:竹村岳】
ソフトバンクのロベルト・オスナ【写真:竹村岳】

「このインタビューを通じて伝えてほしい」というファンへのメッセージ

 思うようにいかないジレンマを一番感じているのは当然、本人だ。ソフトバンクのロベルト・オスナ投手は11試合に登板して0勝0敗、8セーブを挙げるも、防御率4.09。「本調子ではない」と自分自身に矢印を向けている。光明を見出そうともがく中で「本当にキツかった」という出来事があった。首脳陣への感謝。鷹フルに「このインタビューを通じて伝えてほしい」という思いを激白した。

 昨年は49試合に登板して3勝2敗26セーブ、防御率0.92という圧倒的な存在感で守護神を担い続けた。オフにホークス残留を決め、新たに4年契約を結んだ。オープン戦でも5試合に登板して防御率1.80と、誰もが今季も頼もしいクローザーでいてくれることを疑わなかった。しかし、すでに喫している自責点「5」は昨季と同じ数字。誰にでも不調はあるものだが、求められるハードルが高いからこそ、本人もジレンマを感じている。

 象徴的なシーンが、17日の日本ハム戦(エスコンフィールド北海道)だった。打線が延長11回に2点を奪い、その裏に登板。自分が試合を締めセーブを記録される……はずの場面だった。2死一塁からマルティネスに特大の2ランを浴びてしまい、結果的に引き分けに終わった。「本当にキツかった」と吐露するのは、この日の夜のことだ。

「実際に、あの日の夜は本当にキツかった。フラストレーションもあったし、悲しい気持ちにもなりました。なぜかというと、キャンプの初日、初めてキャンプをした時に、小久保さんが来てくれて、倉野さんが来てくれて、高谷さんが来てくれて、若田部さんが来てくれて、僕のことを信頼してくれていることを伝えてくれた。その日から僕のことをすごく大切に扱ってくれた」

「リスペクトもしてくれているし、僕もそれに応えたかったんですけど、(打たれた日本ハム戦は)応えられなかったというのが一番不甲斐なくて……。あんなに良くしてもらっているのに、自分が結果を残せなかったことでまずは悔しくてイラッとした気持ちはありました」

 オスナはキャンプ中から、首脳陣への大きな信頼を口にしていた。その思いは、なかなか上手くいっていない今も同じで「今シーズンは結果が出ていなくてもみんなが同じように扱ってくれる。小久保さんはいい時も悪い時も毎朝来てくれて『おはよう』って元気に挨拶してくれる。そういう変わらない姿っていうのは嬉しいです」。不甲斐ない気持ちを自分自身が抱いてるからこそ、首脳陣からの信頼で決意は新たになるばかりだ。

「こんなに良くしてもらっているのにそれができないというのは自分じゃないし、なんとかしないといけない気持ちはあります。彼らのためにも、こんなに良くしてもらっているからこそ結果で応えたいです。それができていないことが一番悔しいですし、あの日の夜はキツかったです」

ソフトバンクのロベルト・オスナ(左)と小久保裕紀監督【写真:竹村岳】
ソフトバンクのロベルト・オスナ(左)と小久保裕紀監督【写真:竹村岳】
ソフトバンクのロベルト・オスナ(左)と倉野信次1軍投手コーチ(チーフ)兼ヘッドコーディネーター(投手)【写真:竹村岳】
ソフトバンクのロベルト・オスナ(左)と倉野信次1軍投手コーチ(チーフ)兼ヘッドコーディネーター(投手)【写真:竹村岳】

 被弾した日本ハム戦の後、チーム宿舎に到着すると、気がつけばコンビニに向かっていた。シェーバーを購入するとトレードマークだったヒゲを剃った。空港で顔を合わせたチームメートたちも、目を丸くして驚いていた。「実際何かを変えたことによって劇的に変わることはないかもしれない。精神的な問題で、あることを変えたことによってきっかけになって変わることもあるだろうし、何かを変えるというのは気分転換にはいいことです」と、必死にきっかけを探している。

 この日、PayPayドームで行われた投手練習でも倉野信次1軍投手コーチ(チーフ)兼ヘッドコーディネーター(投手)は「信頼は変わらないです」と、改めて言葉にしていた。録音を止めて、オスナの取材を終えようとする。すると、まだオスナから伝え足りていない言葉を語り出した。激白したのは、何度だって伝えたい首脳陣への感謝。自分のキャリアを振り返っても、ホークスは最高のチームだということをファンの方々に届けたかった。

「このインタビューを通じて、全員が素晴らしい人だというのを伝えてほしい。小久保さんや倉野さんだけじゃなくて、本当に全員のコーチの名前を挙げたいです。本当に良くしてもらっているし、こんないいチームでプレーしたことはない。それに応えられていないことはもどかしいですが、結果が全てなので。結果で応えていけるように」

(竹村岳 / Gaku Takemura)