味方の2失策で招いた窮地脱出 「チームスポーツなんで」松本裕樹が語った胸の内

ソフトバンク・松本裕樹【写真:荒川祐史】
ソフトバンク・松本裕樹【写真:荒川祐史】

「点を取られれば、どんなミスがあったとしても悔しい」

 この男ほど頼りになる存在は今、いないかもしれない。ソフトバンクの松本裕樹投手が味方の、チームの窮地を救った。7日に敵地・楽天モバイルパークで行われた楽天戦。同点で迎えた8回に招いた2死満塁のピンチを脱する好リリーフを見せた。結果的に試合には敗れたものの、その存在の大きさを感じさせる投球だった。

 予期せぬピンチだった。2-2の同点で迎えた8回のマウンドへ。先頭の辰己を二ゴロに打ち取ったものの、太田の投ゴロは、太田とグローブが接触した山川穂高内野手が捕球できず(記録は山川の失策)。村林の遊飛で2死となり、小郷には中前安打を浴びた。

 続く小深田の打球は緩い二塁へのゴロに。チェンジかと思いきや、これを名手・牧原大成内野手がはじき、この回チーム2つ目ので失策でピンチが拡大した。最速157キロを誇る松本裕だが、ここまで真っすぐは全て140キロ台。「普通に投げてもスピードが出なかった。でも、そういう日だと思って、そこまでは投げていました」。大ピンチでギアを入れた。

「マウンドに集まったときに『思い切っていこう』という話をして、その通りに全力で腕を振っていくだけでした」。迎えた茂木への初球、この日初めて大台を超える151キロで空振りを奪った。ボールを挟んでの3球目は152キロ。真っすぐで押し込んで左飛に打ち取り、無失点で切り抜けたのだった。

「最後はもう2アウトだったんで、バッター勝負でそれだけでいいかな、と。そんなに何かいろいろなことは考えず、バッター勝負でいくだけでした」。味方の相次ぐ失策で招いたピンチ。そのまま勝ち越し点を奪われてもおかしくないような場面だったが、踏ん張った。

 常々、チームリーダーの柳田悠岐外野手が口にしているように、野手と投手は助け合いながら、長いシーズンを戦っている。野手が大量援護で投手を助けることもあれば、逆もしかり。時には投手が野手に迷惑をかけることもあれば、この日のように野手が投手に迷惑をかけることもある。

 松本裕も「もちろんチームスポーツなんで。点を取られれば、どんなミスがあったとしても悔しいんで、そこだけはしないように、後悔のないように投げました。しっかり腕を振って、腹をくくっていくだけって」という。山川、牧原大の失策を帳消しにする、完璧なリカバリーだった。

 開幕から9試合が終わり、早くも6試合目の登板に。全て無失点で抑え、自身初の6試合連続ホールドとなった。「バッターに集中するっていうか、本当にバッターと対戦することがシンプルにできている」。盤石の松本裕樹。4年ぶりのリーグ優勝を狙うホークスにとって、頼もしきセットアッパーの存在だ。

(福谷佑介 / Yusuke Fukutani)