ギータの感謝に「あ、どうも」 微笑ましいやり取り…周東佑京の“唯一無二”の走塁技術

ソフトバンク・周東佑京(左)と柳田悠岐【写真:荒川祐史】
ソフトバンク・周東佑京(左)と柳田悠岐【写真:荒川祐史】

周東&柳田が見せた好走塁…小久保監督も「ホークスの1つの武器」

 ファンも大好きな“ぎたうきょ”らしいやり取りだった。「あ、どうも」。チームを引っ張る2人が、ホークスを象徴するような走塁を見せた。ソフトバンクは4日のロッテ戦(PayPayドーム)で8-1で勝利した。大津亮介投手がプロ初先発初勝利。近藤健介外野手と今宮健太内野手には本塁打が飛び出すなど、投打がガッチリと噛み合った。快勝の中には、周東佑京内野手と柳田悠岐外野手の足が光った展開もあった。

 初回1死一、二塁で、打席には山川穂高内野手。打球が三塁線を破ると、一走の柳田は一気に本塁まで到達した。左翼を守っていたのは決して守備力の高くないポランコ。隙を見逃すことなく、最後はホームにスライディングで生還した。4回1死一塁でさすがの判断力を見せたのは周東。2球目にスタートを切ると、今宮の打球は三塁へ。捕球した中村奨が一塁に送球すると、周東はその間に三塁を陥れた。相手のミスもあって打者走者の今宮までセーフとなり、続く柳田の三ゴロで7点目。大量リードの中でも気を緩めない“ビッグプレー”だった。

激走を見せたソフトバンク・周東佑京【写真:荒川祐史】
激走を見せたソフトバンク・周東佑京【写真:荒川祐史】
生還したソフトバンク・柳田悠岐【写真:荒川祐史】
生還したソフトバンク・柳田悠岐【写真:荒川祐史】

 2人の走塁を小久保裕紀監督も「走塁に関してはね、ホークスの1つの武器というか。チーム全体、4軍まで含めて決め事もありますんで。その辺は1軍選手がしっかり手本を示すのは当然ですね」と手を叩いた。この写真は4回に柳田の三ゴロで周東が生還した際のベンチ前でのハイタッチを捉えたもの。どんなやり取りだったのか。2人の関係性が表れていて、クスッと笑ってしまう。

「『ありがとう』って言われたので『あ、どうも』って話していました」

 柳田は「わかんないです」と覚えていない様子だったが、周東の足が自分の打点につながったことには「ありがとうございます!」と深々と感謝していた。周東は柳田の人柄を「あのままですよ。優しいです。優しいの一言に尽きます。心が広いし、人として大きいなって思います」と表現していたが、後輩の好プレーをしっかりと称えて、素直に感謝の言葉が出てくるところも柳田らしい。

 35歳となった柳田の初回の激走には周東も「速かったですね! やっぱり速いなって。スピードに乗ったらすごいな、まだ若いなって思いました」と言う。柳田自身は「普通ですよ」と謙遜したが、主力2人の隙のないプレーこそが、勝利に欠かせない細かなピースだ。6点を奪った初回の攻撃では周東にも適時打が生まれ、「とにかく味方打線に置いていかれないようにと打席に入りました。うまく逆方向に打つことができたと思います」と汗を拭っていた。

 4回の周東の走塁にうなずいたのは、一塁ランナーコーチの本多雄一内野守備走塁兼作戦コーチだ。「佑京の足ならあれは行けるでしょう」と当たり前のように語った。「でもね、あれって意外とファーストが焦るんですよ。(捕球の際に足が)離れていたでしょ? 普通に捕っていたらアウトでしたもんね」と、周東が次の塁を狙ったことで相手のミスを誘発したと解説する。

生還したソフトバンク・周東佑京【写真:荒川祐史】
生還したソフトバンク・周東佑京【写真:荒川祐史】

 技術的にも“凄み”が詰まっていたと本多コーチは分析する。「あれはね、セカンドベースの手前で減速したことがよかったんです。そのままスピードに乗っていたらおそらく(中村)奨吾はセカンドに投げてきている。減速して、投げる時にスピードに乗っていた。(スピードを)入れる、抜く、入れるっていうのがよかったんだと思います」。三塁手の中村奨はフェイクを挟まず、迷わずに一塁へ送球した。それをしっかりと確認してから再加速しているのだから、周東の脚力なら三塁を陥れることは当然だった。

 周東自身も「普通(のプレー)ではないと思いますけど、行けるかなって思いました」と率直に振り返る。本多コーチの「入れる、抜く、入れる」という表現についても「そうですね。緩めましたし、しっかり見てから行きました。タイミングです」と、中村奨の動きを目視してのプレーだった。周東は自分自身の脚力を踏まえて「余裕が出てきたんだと思います。相手も勝手に意識してくれるところもあると思う」と話していたことがあるが、このプレーも「余裕は持ちながら、行くところは行って、行かないところは行かないっていう」ときっぱり。一瞬の判断が求められる状況でも、いたって冷静だった。

 本多コーチも「佑京の足ならあれは行けるでしょう」と言いつつも、「佑京じゃないとできないよ」と付け加えた。周東の唯一無二の武器である脚力と走塁技術に対しての最大の褒め言葉だ。隙のない走塁こそがホークスの強さの証。その中でも、周東と柳田の関係性が伝わってきたことが、なんとも微笑ましかった。

(竹村岳 / Gaku Takemura)