新加入もすっかり馴染んだ新天地 長谷川威展が仲を深めたチームメートの存在

ソフトバンク・長谷川威展【写真:竹村岳】
ソフトバンク・長谷川威展【写真:竹村岳】

「いじることもありますし、いじられることもあります」

 まさかの“体調不良”だった。現役ドラフトで今季からソフトバンクに加入した長谷川威展投手は、開幕直前に体調を崩し、内定していた“開幕1軍”を逃した。オープン戦では6試合に登板し、5回2/3を無失点に抑えるなどアピールに成功していた。貴重な左の中継ぎとして期待されていたが、開幕1軍を逃すことになり、チームもブルペンに左腕を欠く中で開幕を迎えることになった。

「非常に残念なタイミングだったなっていう感じなんですけど……」と振り返る。離脱は無念だったが、「現役ドラフトで移籍が決まってからここまで体調不良とかなかったので、やっぱりオープン戦が終わってホッとしたのかなと思っています。疲れていたのかなって……。でも、もう1回、自分の見えない疲れとかを見直すいい時間になりましたね」と、前向きに受け止めている。

 体調不良で自宅療養した2日間は頭痛と38度くらいの熱があったという。「ひたすら寝て、めっちゃ汗かいたんで、寒気がしながらも暑いみたいな感じでした。とにかく汗をかいて、とにかく着替えて、の繰り返しでした」。不幸中の幸いか、療養期間を経て「なんか怖いぐらいに(悪いものが)抜けている感じです」と心身をリフレッシュできた。復帰したタマスタ筑後での練習では、スッキリとした表情を見せていた。

2軍戦に登板したソフトバンク・長谷川威展【写真:上杉あずさ】
2軍戦に登板したソフトバンク・長谷川威展【写真:上杉あずさ】

 2日にはタマスタ筑後で行われたウエスタン・リーグのくふうハヤテ戦で実戦に復帰。3月23日の広島とのオープン戦以来、10日ぶりのマウンドだったが、3点リードの7回に登板すると、危なげなく3者凡退に仕留めた。2つの三振を奪う内容で、キレ味鋭いスライダーを武器に相手打者を封じた。

「ベースは変わってないですね。細かいところはもうちょっと突き詰めていかないといけないなっていうところはありましたけど、(離脱前と)だいたい同じ感じでできました」と、体調不良による離脱の影響はなさそう。ただ、満足はしていない。「細かいところだと、今日はスライダーのボール球とかで三振取りましたけど、1軍の打者にそこを見逃された時とか、その1球後をしっかりと考えていかないといけない。あのボール球は多分(1軍の打者は)振らないのかなっていうところはある」と反省も忘れていなかった。

 移籍が決まってからは怒涛の日々だった。「右も左も分からぬままって感じでしたね」。オフの自主トレの段階から今までとは違った。「行ってみないと周りの選手がどんなのかもわからない状態だったので。普通に同じチームでの自主トレだったら、来年はライバル投手より頭一つ抜けるために、もうちょっとこうしようとかはあったんですけど、(ホークスには)どんな選手がいるかもわからない状態だった」と頭を悩ませた。

 新天地だからこそ? の出来事もあった。体調不良になっても「全然冷たいとかはないですけど、誰からも特に連絡はなかった(笑)」と笑う。体調不良を報告する際も戸惑いがあった。「基本的にトレーナーの人に報告する感じなんですけど、直接、倉野さんに連絡とかしたほうが良かったのかな? どうなんですかね?」。長谷川は終始、笑顔でその時の心境を明かしていた。

 チーム内では「年齢的に中間ぐらいにいるんで、いじることもありますし、いじられることもあります」と先輩後輩問わず、仲良くなったという。「1軍だと津森(宥紀)さんとか大津(亮介)さん、又吉(克樹)さんとか。でも、みんな基本的に良くしてくれる感じです。食事とかも行ったりします。こっち(ファーム)だとキャンプA組で一緒だった松本晴とか中村亮太さんとか。(日本ハムで1年チームメートだった)古川侑利さんも仲いいです。鍬原拓也さんとか、基本的にみんなと仲いいですね」。次から次にチームメートの名前が出てくるほど、チームには馴染めているようだ。

 今回はまさかの形で開幕直前の離脱となったが、「ほんとにプラスでしかないと思います。結局1軍に行って、投げてみないとプラスになったかマイナスになったかもわからないですけど、プラスになったなって思えるようなピッチングをしたいです」と捉えている。何事にもドシッと構えられるマインドも、中継ぎ投手としての活躍に繋がるのかもしれない。新天地で“長谷川らしさ”が光るシーズンにして欲しい。

(上杉あずさ / Azusa Uesugi)