「ギーさん、聞きに来ました」 近藤健介が明かす舞台裏…柳田悠岐が明かした“まさか”

ロッテ戦で好守をみせたソフトバンク・柳田悠岐【写真:荒川祐史】
ロッテ戦で好守をみせたソフトバンク・柳田悠岐【写真:荒川祐史】

柳田は4試合を終えてフルイニング出場「野球をやっている感があります」

 決死のプレーだった。まさに、勝利をもぎ取ったダイブだ。ソフトバンクは2日のロッテ戦(PayPayドーム)で2-0で勝利した。外野守備で好プレーを見せたのが、柳田悠岐外野手と近藤健介外野手だった。直前にあったのは、ベンチでの2人のやり取り。「どうやってやったん?」。微笑ましいやり取りは、すぐに必死の表情に変わったのが、柳田らしかった。「まさかまた……」。

 まずは6回2死。大関友久投手と、藤岡との対戦だ。8球目、フラフラと上がった打球は左翼線へ。1歩ずつ、慎重にフェンスへと近づいて行った近藤は、最後は身を乗り出してキャッチした。マウンドの大関も、両手を掲げて称えるビッグプレーだった。続いて、9回無死。ソトの打球は右翼線に舞い、柳田はほとんどスピードを緩めることなく「コカ・コーラシート」へ。着地まで成功し、怪我もなく無事に捕球。マウンドのロベルト・オスナ投手も、帽子を取って敬意を表していた。

 柳田は開幕して、4試合ともフルイニングで出場。アダム・ウォーカー外野手の加入を踏まえて、自主トレの時から重点を置いてきた守備面でもチームに貢献している。「やっぱり野球をやっている感がありますし、チームも勝っていますし、それが一番いいです」とうなずいた。フェンス際のプレーについても、にっこり笑顔で舞台裏を明かしてくれた。

「アドレナリンが出ていました。コンちゃん(近藤)がいいプレーをした後に、聞いたんです。ベンチですぐに『どうやってやったん?』って。『気持ちで取る』って言っていたんですけど、まさかまた(自分のところに)来るとは……(笑)。気持ちで行きました」

 ベンチで、驚いた表情で近藤に感想を聞く柳田の姿が、なんだか想像できてしまう。近藤も「ギーさん、聞きに来ました(笑)」と笑って振り返る。柳田がキャッチした時、レフトからも満面の笑みで両手を掲げていたが「9回で、2ランを打たれたら同点になる状況。あそこで(流れを)切って、ポランコを迎えるっていうのは大きかったと思います。嬉しかったですね」と、その理由を明かした。

ソフトバンク・近藤健介【写真:荒川祐史】
ソフトバンク・近藤健介【写真:荒川祐史】

 フェンスに向かって1歩ずつ近づいた近藤と、足を止めることなく飛び込んだ柳田。恐怖心とも紙一重のプレーに柳田は「当たると思ったんですけど、しっかり取るっていう気持ちだけでした」と、執念が恐怖を上回ったようだ。井出竜也外野守備走塁兼作戦コーチも「あそこは恐怖との戦いでしょう。(ラバーも)柔らかいですし、フェンスもちょうどね、あれがもう少し高かったら怖いんですけど」とうなずく。柳田、近藤が両翼にいることも「不安なく見ていられます」と信頼を寄せた。

 開幕して4試合を終えた。指名打者を担っているのはウォーカーだが、今週は6試合ある。金曜日は福岡から仙台への移動ゲームで、土日の楽天戦はデーゲームだ。小久保監督も「今週は考えるかもしれないです。移動ゲームもあるし、ナイターデーもあるんで。それまでの試合と運動量です。運動量はしっかり見ます」と考慮する構えを語る。

 守備固めの1番手と位置付けている川村友斗外野手が、ここまで出場がないことも「開幕してから今日まで全部僅差なので」と指揮官は説明していた。柳田も「すごく全選手に目を配ってくださっているというか、そういうのをすごく感じます」と、小久保監督からの配慮はしっかりと受け取っている。近藤との両輪にはグラウンドには立ち続けてもらわなければならない。コンデイションのチェックは、首脳陣にとっても必須の作業となっていく。

 5回2死二塁のチャンスで、柳田は中前に適時打を放った。「追い込まれていたので、しっかりコンタクトすることだけを考えていました。たまたまいいところに転がりましたし、点も入ったのでよかったです」とバットでも勝利に貢献した。「もちろん、優勝したいという気持ちです」という決意で幕開けた2024年。今年も柳田悠岐の存在が、どこまでも頼もしい。

(竹村岳 / Gaku Takemura)