開幕前日に語った2024年の“戦い方” 小久保裕紀監督が目指す勝利と育成の両立

ソフトバンク・小久保裕紀監督【写真:竹村岳】
ソフトバンク・小久保裕紀監督【写真:竹村岳】

「選手たちも常勝と言われた時代から、もう今はチャレンジャーっていう気持ち」

 プロ野球のペナントレースが29日に開幕する。ソフトバンクはリーグ3連覇中の宿敵オリックスと敵地・京セラドームで開幕カードを戦う。チームは28日、敵地で前日練習を実施。就任1年目の小久保裕紀監督が4年ぶりリーグ優勝がかかる今季への思いを語った。

――前日の心境はいかがですか。
「よく聞かれるんですけどね。あんまり変化ないです」

――現役時代も何度も経験した開幕前日。監督となっての心境に違いはありますか。
「比較的、キャンプ、オープン戦と順調にきたんで、逆に順調すぎて怖いというか、これが多くの怪我人が出たりとか、計算していた選手がいなくなったりとかっていうのがあれば、もっと不安になったんでしょうけど、比較的そこがない状態でのスタートなんで、慢心することなく、引き締めて、という方がウエートを占めていますね」

――そういう心境になるのは監督ならでは。
「そうですね、選手の時はね、自分の1本目のヒットであったり、1本目のホームラン、初勝利というのに全集中でしたけど、監督になれば、もちろん目先の1勝は大事ですけど、年間を通して、優勝するということが大きな目標になるんで、優勝するチームでも50敗ぐらいするわけですからね。そういうところで、仕事としては全く違いますね」

――オリックスが相手です。
「この3年間、ホークスが優勝を逃している間、3年間優勝したのはオリックスさんなんで。今のホークスの力がどのぐらいかっていうのを、試せるというか、チャレンジできるいい相手だなと思いますので。もちろん、チャレンジャーとしていくっていうのはもう選手たちにも伝えてますし、選手たちも常勝と言われた時代から、もう今はチャレンジャーっていう気持ちなんで、向かっていきたいなと思います」

――開幕戦は有原投手に託す。
「昨年の実績を見ても、今年の春のキャンプからの状態、仕上がりを見ても、彼に託すというのは、僕もそうでしたけど、コーチ、チームメート、ファンも納得の選手だと思うんで。いいスタートを切れるように、とにかく彼はもうあまり結果を気にせず、キャッチャーミットをしっかり目掛けて、チームのため、ファンのため、自分のために投げてほしいと思います」

――1か月前には開幕投手を決めた。開幕が近づくにつれての仕上がり具合は?
「開幕投手でかなりプレッシャーがある調整をしたと思うんですけども、ちゃんと状態も上がっていますし、ただ、彼の場合は1年、離脱することなく、ローテーションを回ってもらいたい1番手の選手なんで、明日はいきなり、何て言うんですかね、かなり多い球数を投げさせるようなことはなくて、年間を通して考える1試合にしたいんで。まだまっさらなマウンドに最初に上がるピッチャーが有原なんで、チームを代表して投げてほしいです」

――長いシーズンの1試合に過ぎないという捉え方もあれば、重みがあるという捉え方もある。
「1年目なんで、監督が、個人的にもその1勝目というのは早く欲しいなと思いますよね。ただ、明日のゲームプランもあるんで、プランから外れるような選手起用はしないというふうには決めています」

――競争を経て明日のメンバーが決まった。
「野手に関してはある程度、固定できるメンバーでスタートできそうなんで、控え選手はもうほぼほぼ左バッターの守備固めと代走みたいな選手しかいないんですけど、彼らにとってみれば、プロの公式戦で1軍を初めて経験する子たちばかりなんで、独特の雰囲気とかそういうものをしっかり味わってほしいなと思います。ピッチャーに関して言えばオスナに繋ぐというのが、もう勝ちパターンで一番大事なところなんで、彼にいい形で繋げるられる、そういうゲームプランをしていきたいなと思います」

――この1年、小久保ホークスはどう戦っていく。
「チャレンジャーとして、パ・リーグの頂点を目指すっていうことは全く変わりないですし、あとは選手の成長、もちろん勝利なんですけど、成長もしっかり考えながら、我慢するところは我慢して、その選手の伸びしろがどこまであるかっていうのを見極めながら、そういうシーズンにしたいなと思います」

――オリックスの今年の印象は。
「選手の印象というよりは中嶋監督。これはもう経験豊富で、3連覇してる監督なんで、中嶋監督です」

――常勝じゃない、チャレンジャーだと。
「そうですね、古き良きものと古臭いものの選別って話もしてるんでね。きっちりやってもらうものはきっちりやってもらうし、新しく取り入れるものは新しく取り入れるし、その辺は柔軟に臨機応変にやっていきます。チームで決めているルールは柳田であっても、近藤であっても守らせます」

――会見とかでも“鞘当て”は始まっている?
「全く。全くないですよね」

――勝利数の目安にイメージはあるか。
「ないです。ていうか、そんなん、ラインはそうやって平均して出てくるでしょうけど、まずいいスタートを切りたいなともちろん思っていますけど、星勘定って勘定できるんだったら、どのチームも優勝するじゃないですか。チームは生き物なんで、その時その時の最善、どのメンバーでどうしたら勝てるかっていうものの積み重ねが優勝だと思うんで、そこの小さい綻びとか日々の変化にしっかり気づけるかどうかがポイントでしょう。そこをナアナアにしてると、うまくいかないでしょうね」

――よく“カード勝ち越し”とかも言われる。
「そんなん普通じゃないですか。もう、それは多分、小学生に聞いてもそう言いますよね」

――選手の成長と言っていた。勝利と成長の両立は難しいが?
「育成から支配下になった子たちがいきなりレギュラー取るかって言ったら、それは難しいと思いますよ。ただ、初めての緊張する、僅差の場面で守備固めで使うとか、そういうのは最初は失敗が起こるかもしれないけど、でも、掴み取った支配下で、初めて1軍のプレーヤーとしてプロ野球選手になったわけなんで、そういうところを送り出せるかどうかはもう僕の腹次第なんで。そういうところに怖気づかない自分でいるということです」

――順調過ぎるという言葉通りに迎える開幕。
「そうですね、野村勇ももう2軍戦には出てきているんでね。ちょっと急がせたら間に合うかもしれなかったんですけど、全く急がせなかったんで。最初に併用とか、でも、相性って去年の相性とか気にしないんで。相性ってやっぱり夏ぐらいから出てくるものなんでね。そこからはちょっとそういう戦術に変わるかもしんないですけど、それまではある程度、今持っている力をぶつけるっていうのを見ていく段階。そこにおいて、あまり併用するレギュラークラス、アタマから行く選手の控えはいらないんで、だから、今みたいなのでスタートします。これは途中から変わっていきます」

――固定するメンバーの中でキーマンを挙げるとしたら。
「キーマンってそんなん、柳田、近藤は一応全部出てもらいたいですよ、当たり前ですけど。有原も年間通してローテーションを回ってもらいたいなと思いますけど。(柳田は)年齢的なこともあるし、去年が60試合ぐらいDHしているってこともあるんで、その辺もしっかり考えながら、トレーナーとSC(ストレングス&コンディショニング)とコーチと、コミュニケーションをとっての状態の把握っていうのは大事でしょうね」

――開幕戦は勝ち続けている。
「俺、ヘッド(コーチ)の時って勝ったっけ? 勝てれば一番いいです」

(竹村岳 / Gaku Takemura)