古川侑利だから言えた「おめでとう」 支配下枠が埋まっても…3人に伝えた祝福の言葉

ソフトバンク・古川侑利【写真:竹村岳】
ソフトバンク・古川侑利【写真:竹村岳】

日本ハム時代にも経験「育成→支配下」 驚きの形で新庄監督から知らさせた「マジすか!?」

 3人が同時に夢を叶えた。同じ立場の選手にとっては“椅子が埋まった”ことを意味する。ソフトバンクは緒方理貢外野手、仲田慶介内野手、川村友斗外野手を支配下登録した。62枠から3人が埋まり、65枠。あと5枠を奪い合うことになったのが、春季キャンプ中から好調を維持していた古川侑利投手だ。3枠が埋まったことに対して、率直な思いを鷹フルに打ち明けた。2桁を掴んだ3人に伝えたのは祝福の言葉だった。「おめでとう」――。

 古川は2022年オフに行われた現役ドラフトで日本ハムから加入した。昨シーズンは9試合に登板して防御率4.50だったが、ウエスタン・リーグでは34試合に登板して防御率1.43。体は元気であること、投手としての実力はまだまだ衰えていないことを示したシーズンだった。オフに戦力外通告を受け、再び育成契約を結んだ。まずは2桁を目指すことが、2024年の目標になった。

 春季キャンプではB組からスタートして、途中からA組に合流。倉野信次1軍投手コーチ(チーフ)兼ヘッドコーディネーター(投手)も「一番アピールできたのは古川」と、首脳陣も評価を与えていた。しかし、オープン戦に入ると3試合に登板して防御率7.36。春季キャンプの開幕からA組入りを果たしていた仲田、川村、緒方の3人が支配下を掴む結果になった。首脳陣が「本番モード」と設定していた3月19日、このタイミングで支配下を掴めなかったことをどのように古川は受け止めたのか。

「いや……。“まだあるでしょう”っていう、そんな感じに思っています。この3連戦(広島との)でアピールできるように、オープン戦最後のカードなので」

 自分の現状も踏まえて、チャンスは「まだある」と、ハッキリ言った。一切ネガティブに捉えていないところが、何度も逆境を乗り越えてきたこの男らしかった。春季キャンプでは結果でも内容でもアピールしていたが「自主トレからガンガン追い込んできていたので。そういった時はありましたね」と状態が下降気味にあることはしっかり把握している。試合での登板にも合わせながら、もう一度、上昇気流を描けるように練習から取り組んでいるところだ。

 支配下の会見が行われたのは19日だったが「見ていないですね」と笑う。「記事を見て『あ、なったんだ』っていうのを知りました」と明かすと「3人に会った時は『おめでとう』って言いました。普通に、ロッカーが近いので。『おめでとう』って」と祝福の言葉を伝えていた。自身もファームで過ごした時間が長かっただけに、3人の頑張りは見守っていた。育成の辛さも知っているから、2桁の背番号を見ると「おめでとう」という言葉が自然と出てきた。

「自分も絶対になるぞ、っていう気持ちは強くなりましたね。支配下になって、シーズンを通して活躍がしたいと思いました」

ソフトバンク・古川侑利(右)【写真:竹村岳】
ソフトバンク・古川侑利(右)【写真:竹村岳】

 2021年オフに、巨人から戦力外通告を受けて、育成契約で日本ハムに入団した。背番号は116番。「もしかしたら僕は野球ができていなかったかもしれない。何事にも感謝する気持ちを持ってやっていました。『今日もマウンドに上がれている。ありがたい』っていう考えでした」。2022年の春季キャンプから結果を残し、3月20日に支配下登録を結んだことが発表された。新しい背番号は91番。同年はキャリアハイの34試合に登板した。

 通常なら「育成から支配下になる」というのは、球団の編成部からの連絡で知ることが多い。しかし古川にとって、日本ハム時代は新庄剛志監督。2022年は登録名が「BIGBOSS」だった時代だ。支配下登録の一報は、豪快な形で古川の耳にまで届いた。

「広島に行っていた時ですね。BIGBOSSに手招きされて『え、何ですか?』みたいに言ったら『支配下にしようと思っているんだ』っていきなり言われました(笑)。握手して『マジすか!?』『あざす!』って言いました。まさかのここで、裏とかじゃないんだって思いました(笑)」

 2022年、3月11日からマツダスタジアムで行われた広島との3連戦。試合前練習を終えてベンチに戻ろうとしている時に、指揮官から手招きされた。グラウンド上の出来事で、人の目もたくさんある。「普通に記者の人もいて、パシャパシャって撮られて、握手もしてたし聞かれるじゃないですか。『何を話してたの』って。『これはまだ内緒でお願いします』ってお願いして、そんな感じでした。さすがBIGBOSSですよね」と懐かしそうに振り返る。

 まさかの形で知ったが、当然、胸中は興奮を抑えられない。「『支配下にしようと思っているから』って一言でめちゃくちゃ鳥肌が立ったのは覚えています。“よっしゃ”って思って、色んな人たちに感謝したくなりました」。ロッカーの裏に消えると、すぐに愛妻に連絡。周囲の選手たちに知られるわけにもいかず、電話ではなくLINEで報告をした。「平静を装いながら(笑)。『ボスに、支配下にしようと思っているって言われたわ』って感じでした」と、大切な人に吉報を伝えた。

 3桁から2桁になるという経験が古川にはあるから、道筋を見失うことはない。「変わらない気持ちで、しっかりと取り組んでいけたら。投手陣は怪我人もちらほらと出ていますし、そこでインパクト、いいアピールができたらいいのかなと思います」。支配下登録とはきっと、諦めなかった選手だけが掴める“夢”だ。

(竹村岳 / Gaku Takemura)