サイン書いた色紙を持ち去る“ド天然” ピカチュウ見間違い…支配下掴んだ24歳の素顔

ソフトバンク・仲田慶介【写真:矢口亨】
ソフトバンク・仲田慶介【写真:矢口亨】

2021年ドラフトで最下位指名…仲田慶介が念願の支配下登録

 圧倒的な努力で掴んだ支配下登録だった。ソフトバンクの育成3年目・仲田慶介内野手は、川村友斗外野手、緒方理貢外野手と共に19日に支配下契約を結んだ。2021年ドラフト会議では、128人中128番目で名前を呼ばれる“最下位指名”から這い上がって掴んだ支配下。ひたむきな努力が実を結んだ瞬間だった。

 仲田慶介という“野球大好き人間”の行動には驚かされてばかりだった。凄まじい練習量で知られる自主トレで、筆者はここ2年、打撃投手をさせてもらっている。私自身、クラブチームで野球をしているが、1年間で最も球数を投げるのが、この仲田との自主トレだ。1球1球、ものすごい集中力や執念を感じさせながら、延々とバットを振る。

 時折「肩、大丈夫ですか?」と気遣ってくれるが、自分には一切、妥協しない。普段は謙虚な性格だが、野球に関しては「自分、がめついんで」と自認する。いつもいつも、自分が納得するまでバットを振り、打撃だけでなく、守備、走塁と、決めた練習メニューに時間をかけて黙々と取り組んできた。

 走塁面では俊足が持ち味である舟越秀虎外野手(巨人育成)に教えを乞うた。足が速くなるためのトレーニングと走塁技術を学び取ろうと、たとえ後輩であっても、すごいと思えば、頭を下げた。仲田の熱意にほだされたのは首脳陣や先輩、後輩だけでない。自主トレで使用する球場の管理人も、仲田の熱意に押され、本来は休みのはずの年末年始もギリギリまで球場を使わせてくれた。「練習しなきゃ」というよりも「練習したい」という仲田のほとばしる熱意に周囲は動かされた。

段差につまずいて怪我…おっちょこちょいの一面も

 ひたむきさで知られる仲田だが、ちょっぴりおっちょこちょいな一面もある。福岡大時代に、ベンチからグラウンドに出る所の段差につまずいて全治2か月程度の怪我を負ってしまった。ファンにサインを求められ、色紙とペンを渡されてサインを書くところまでは良かった。ペンだけをファンに返し、色紙は自分が持ち去る、という天然っぷりを発揮したこともある。

「このピカチュウ可愛いなと思って」と購入したスマホケースだったが、実際にはピカチュウではない全くの別物だったりも……。みんなが笑うところでポカンとし、みんなが笑っていないところで1人笑ったり、「おい、仲田~」とチームメートにもイジられたり、と、そんな素顔も仲田の魅力だ。

 野球に一直線なところに「すごいな」と尊敬させられると同時に、ちょっと「大丈夫かな」と心配になる面もある。ただ、その生き様、姿勢、総じて周囲が「頑張れ」と、心から応援したくなる人間、それが仲田慶介でもある。ここからが本当のスタート。でも、ずっと目標にしてきた支配下を掴んだ節目として、声を大にして言いたい。支配下登録、本当におめでとう、と。

(上杉あずさ / Azusa Uesugi)