オスナの本心は「大好き」だから 尾形崇斗への“バチギレ”…独占激白で明かされる全て

ソフトバンクのロベルト・オスナ(右)と尾形崇斗【写真提供:尾形崇斗】
ソフトバンクのロベルト・オスナ(右)と尾形崇斗【写真提供:尾形崇斗】

リハビリ組の尾形崇斗に「バチギレ」…オスナの視点で語られる期待、愛情、信頼

「バチギレ」の舞台裏を語った。もちろん、全ては期待と愛情だった。ソフトバンクのロベルト・オスナ投手は、2月の春季キャンプから尾形崇斗投手と多くの時間を過ごしてきた。「才能に溢れたいい投手だと思います」。そんな尾形にかけた厳しい言葉と態度は「大好き」だからだ。球春を終え、2人の間に起こった出来事について、オスナは鷹フルに独占激白した。「彼のためを思って」――。

 昨シーズン途中、オスナから歩み寄ったことで2人の距離はグッと縮まった。シーズンが終わった後も尾形は「気になっていました」と、流動的だったオスナの去就も心配しながら見つめていた。4年契約を結んだことで“師匠”の残留が決定。オスナにも手を引かれ、尾形のオフからの取り組みはすぐに形になった。キャンプ2日目のブルペン投球で155キロを計測した。

 しかし春先とはいえ、まだまだ宮崎の気温は上がりきっていなかった。体の成長は出力にしっかりと繋がっていたが、ハイペースだった影響は右肩の張りにもなった。どこかを痛めたというわけではなかったがリハビリ組に合流することになり、その状態をオスナに報告すると「バチギレされた」という。オスナは尾形に対し「理由が僕にはわからなかった」と切り出す。伝えたかったのは、自らを管理することだった。

「何かを言ったというか、アドバイスをさせてもらった。なぜかというと、シーズンは長い。3月から長ければ10月、11月まで行く。8か月以上があるシーズンの中で、彼はキャンプの初日から95マイル(約152.9キロ)から97マイル(約157.7キロ)狙っていた。その理由が僕にはわからなかった。開幕1軍を目指して頑張ったっていうのはわからなくはないけど、怪我をしてしまって、開幕1軍は難しいわけじゃないですか。やっぱり理解できないです。僕には2日目に、155キロを出す必要があったのかなと(思います)」

 尾形は紅白戦でも結果を残し、小久保裕紀監督にも「明らかに1軍レベル」とさえ言わせた。成長した尾形の存在が1軍に必要だと、首脳陣の評価も右肩上がりだったはずだ。オスナも「もちろんですし、自分の管理ができていたら開幕1軍の可能性があった。それが、どんな選手でも怪我をしてしまったらプレーができないわけですから」と続ける。“1軍レベル”の選手が自分を制御できず、戦線離脱してしまう。オスナにとっては、プロ野球選手としての管理不足に映ってしまった。

 オスナはMLB時代には160キロを計測したこともある。今春のオープン戦では2試合に登板しているが、球速は150キロ前後にとどめている。春先だから出力を意図的に管理しているといい「自分で考えたり、意見を聞いて、自分の中ではやらないといけない理由を理解して、出力を管理しているつもりです。自分も完璧ではないので、できていない部分もありますけど、いろんな人に話を聞いています」と明かす。それだけ出力の管理は難しいからこそ、オスナからその重要度は伝え続けていた。

ロベルト・オスナ(左)の投球練習を見つめる尾形崇斗【写真:竹村岳】
ロベルト・オスナ(左)の投球練習を見つめる尾形崇斗【写真:竹村岳】

 遠征先で中継ぎの後輩たちと食事に出かけたこともあるが、あくまでも自身のスタイルは「聞かれたら答えますけど、自分から『こうじゃないの』っていうことはないですね」とオスナは表現する。決して誰かれ構わずに面倒を見るわけではない。その上で尾形をはじめ、ダーウィンゾン・ヘルナンデス投手や松本裕樹投手ら、自分の懐にまで飛び込んできてくれる選手には自分の全てを持ってして、向き合う。尾形への“バチギレ”も意図的だというのは、プロとして大切なことに気づいてほしかったからだ。

「この態度っていうのは、あえて厳しくしています。もともと尾形のことはいいやつ、ナイスガイだと思っています。ただこういう(厳しい)ことを言ってあげないと、こういう(厳しい)態度を取らないと本人が真剣に思わないかもしれない。彼のためを思ってわざとやっていますし、こういう態度を取ることで彼が『自分が良くなかった』と気づくことができると思います。常に仲良くすることだけが本当の友達、本当の信用ではないと思います」

 3月をリハビリ組で過ごしている尾形。12日はチームは鹿児島での巨人戦だったが、オスナは筑後の残留練習に参加。尾形と久々に再会し「尾形と話したんですけど、普段通りに話しましたよ」とうなずく。1度、厳しく接したことを引きずることは絶対にしなかった。オスナ自身も「このご時世がすごく難しくて、自分がいいと思ってやったことが記事に悪く出てしまったりもする」と、受け取られ方にまで気を遣う。だからこそ「裕樹や尾形は聞いてきてくれますよね。それならこちらとしてもアドバイスするし、助けたいです」と“本気度”まで見抜いて接するのがオスナのやり方だ。

ロベルト・オスナの投球練習を見つめる尾形崇斗(左)と松本裕樹(右)【写真:竹村岳】
ロベルト・オスナの投球練習を見つめる尾形崇斗(左)と松本裕樹(右)【写真:竹村岳】

 強調しておきたいのは、オスナは尾形の投手としての能力を非常に高く評価していること。だからこそ“一瞬”ではなく、プロとしてシーズンを戦い抜くことができるとも期待している。時代には終わりがくることを知っているだけにオスナは「僕はいつかホークスからいなくなる」と切り出す。クローザーというポジションにプライドとリスペクトを抱くからこそ、自分の後継者になれる可能性が尾形にはあると、誰よりも信じていた。

「僕の前には(デニス・)サファテ選手という素晴らしいプレーヤーがいて、その次に森(唯斗)選手、そして自分がいる。時代というか、その選手がずっといるということはできないんです。それはわかっていること。僕の時代もいつか終わるんです。その時に、尾形が僕らのポジションにいる可能性は非常にある。僕は彼に良くなってほしいからいろんなアドバイスをするし、いろんな態度も取って教えようとしています」

 尾形は今回の1件を踏まえて「『お前はもういい』みたいな感じで、突き放されてるんで。もう1回信頼してもらって、いい関係でもう1回会えるように」と話していた。その姿勢についてオスナは「勘違いしないでほしいのは」と語り出す。信頼、期待、愛情。2人の間ではもう、全てが積み重ねられている。

「尾形は僕のために何かをしないといけないというわけではないんです。いい選手、いいチームを作るためには自分1人ではダメなんです。1人の選手の力ではなく、いろんな選手が力を合わせないといけない。そのために僕は上手くなってもらいたいですし、僕も上手くなっていきたい。僕はアドバイスをするけど、尾形は僕が言ったことをやる必要はないし、僕の信頼を取り戻す必要もない。友達として大好きですし、信頼していますから。彼がやらないといけないことは、キャリアを考えて、学ぶことです。そこを考えてほしいです」

(竹村岳 / Gaku Takemura)